感染症管理加算と開業医と適正使用

ときおり見かけるのが、キノロンに関する不適切な誤解。投与量の話ではありません。さすがに投与量については「一日一回」になりましたし、製剤も出てきたのでこれから分割投与はほぼ絶滅すると思いますが、新しく出てきた薬剤、たとえばGRNXなどは、グラム陰性菌に対してはLVFXよりもMICが高くなる傾向があります。

はい、何も考えていないと尿路感染症に出してしまいそうになりますね(苦笑)。営業さん、「弊社のキノロンは殺菌性に働きまして、これまでのキノロンに比べて○○倍の……云々」という宣伝はやめてください、マジで。GRNXもMFLXも、肺炎球菌に対しては凄まじい抗菌活性を示します。しかし、グラム陰性桿菌に対しては、LVFXよりもMICが高くなる傾向があります。だもんで、使えるシチュエーション、用途ははっきりしていますね。外来でフォローすることが出来る比較的軽症の肺炎、しかも結核が否定的である症例、ってところでしょう。

新しいから以前あるものよりもいいに決まっている、という思い込みは、とんでもない誤解です。いまだLVFXは優れた薬剤であり、キノロンを第一選択とする多くの感染症で第一線を張れます。開業医さんで何でもかんでもGRNXというのも時折見ますが、きわめてよくないやり方だと思いますね(別にGRNXに恨みはありません)。

厚労省のこれからの保険行政は、地域の感染症ネットワークを作る方向へと流れていっていると思います。でも、地域の「抗菌薬の適正使用」って、開業医さんを巻き込んでやらないと、まったく意味ありません。地域の中核的な病院に努めている検査技師なら、おそらくここ数年で爆発的にESBL産生菌やら耐性菌やらが増えたことは実感としてあると思いますが、今回の診療報酬改定で新設された感染管理加算の残念なところは、開業医がすっぽり抜け落ちているところじゃないかと思います。……まあ、耐性菌のすべてが開業医の性だとはいいませんが。