O抗原検査の怪

O抗原検査は、たぶんよく誤解されている検査のひとつなんじゃないかと思います。

よく「常在菌と思われる菌の感受性試験をすると病原性を持った起炎菌に見えるから、あえて同定・感受性試験をやらない」ことがありますが、O抗原検査も「あえてやらない」のが正しいのかなと思います。便の培養で大腸菌を検出することはよくありますが、大腸菌は便の常在菌の一種であり、そこにいるのが当たり前、検出されて当たり前の菌でもあります。困るのは、その大腸菌に病原性を持つ株が存在するということで、それがO-157だったり、O26だったり、O111だったり、O104だったりするわけです。

しかし、O抗原は細胞壁に存在するただの抗原であり、その抗原をつかまえて分類に利用しているだけなのです。先に挙げたO-157などはよくベロ毒素を作っており、O抗原と病原性がまったく無関係というわけではありませんが、基本的にはO抗原と病原性は相関せず、ベロ毒素陰性株のO抗原検査を実施するのは意味がないように思います。要するに、病原性を司っているベロ毒素を産生している株を拾えれば問題ないわけで、そういう株をきっちり検出できればいいのかな、と。

いやいやいや、毒素原生大腸菌などベロ毒素を作らない菌でも病原性のある菌はいるぞ、という反論もあろうかとは思いますが、どーせエンテロトキシンの産生性もO抗原とは相関しませんし、これまた意味がないかなとは思います。

食中毒患者さんの便、大腸菌のO-86aが検出されました!とか聞いたら、いかにも病原菌に聞こえませんか?