否存在の証明論理

悪魔が存在しないことを証明することは難しい。きょうもきょうとて、勤務時間外の呼び出し多数。

まずおかしいのが、塗抹を見たところで結核の存在を否定できるものではない、ということ。塗抹を見ることでわかるのは、「喀痰の中に塗抹で見えるだけの菌量が存在しない」というだけのことである。じつはガフキー0号患者(つまり塗抹で菌が確認出来ない患者)でさえ、疫学的に感染源になりえるかもしれないとされている。したがって、塗抹で見えないからといって、結核の疑いが濃い患者を一般病棟に入院させていい理由にはならない。

結核性胸膜炎を疑い、どこに入院させるかを考えた場合、やはり最初は結核病棟が適当だろう。複数回塗抹で陰性が確認できれば一般病棟に移ればいい。最初からどんぴしゃ一般病棟入りというのは、一種のギャンブルである。

結核の可能性を「ちょっとだけ」疑い、とりあえず帰宅させたいんだけど、もしかして排菌してないよね、というのを確認したくて呼び出し、このケースが非常に多い。個人的には、気持ちはわかるが無意味なケースだと思うので、ほぼすべてお断りしている。これはどちらかというと、「帰宅させる理由」の丸投げに近いという印象があり、お断りして問題になったケースは(幸いにして)いまのところない。看護婦さんがぶつぶつ云っているのは知っているが、知ったこっちゃないのである。

結核の可能性を「ちょっとだけ」疑い、かつ入院させたいとき、どうしたらいいのか。答えは変わらないと思う。結核という病気は、結核と疑えば否定されるまで、それは「結核」であると考える。結核を疑うのであれば、結核病棟へ。疑わないのであれば、一般病棟で基礎疾患をしっかりケア。やることは変わらないのではないか。これを実行するためには、「結核病棟に多数個室が存在すること」が大前提になる。つまり、設備面で排菌患者を多数扱えることが大前提になる。

結核を否定するのは難しい。私がこういうことを云うのもナニなのだが、勉強会をするときにいつも思うのが、「なんでこんなことを改めて云わないといけないのだろう」である。いまの医師は、診断の仕方は念入りに教育されて出てくるのだが(それこそ何年も医師をやっていても一度も遭遇しないようなレア疾患の診断の仕方まで念入りに教育されて出てくる)、除外の仕方をほとんど知らない/どうやったらいいのかわからないという医師が異常に多いという印象がある。微生物関係の検査の読み方も、ほとんどこっちで教育しなおさなければならない。おかしくないだろうか?感染症って、精神科でも遭遇するのに、こんな内容の勉強は大学でやるべきではないか?とにかく、考え方にまとまりがなく、非論理的なのである。

市井の中規模病院で、めちゃくちゃ論理的に、検査を駆使しながらコモンな疾患を追いつめていく内科医の漫画とかないかしらん。「ゴッドハンド輝」とか「医龍」とかけっこう好きだし、「仁」もずっと読んでたけど……誰か作らない?