超耐性菌…?

耐性アシネトバクターの記事

アシネトバクターのアンケートが病院に来ていたから何かあったのかなと思っていたのですが、コレでしょうか。抗生物質が効かない菌がいるというのは非常にインパクトの強いニュースなので、何かの活動のきっかけにはうってつけですね。

 皮膚に付く細菌「アシネトバクター」のうち、抗生物質が効かない強い耐性型が、愛知県内の会社員男性(59)から検出された。日本でこのタイプが確認されたのは初めてとみられる。昨年1月に福岡県内で、アシネトバクターが原因となった院内感染が起きているが、今回は耐性がさらに強いタイプ。今後、国内で院内感染が多発する恐れもあるとして、医療機関は注意を呼び掛けている。

 男性は2月初旬、出張先のアラブ首長国連邦(UAE)で仕事中に事故に遭い、大腿(だいたい)部を切断、緊急治療を受けた。同月下旬に帰国し、愛知医科大病院集中治療室(ICU)に搬送された。強力な抗生物質を使っても切断部の感染症が改善せず、国内では効く抗生物質がないタイプのアシネトバクターが検出された。

 同病院は、別の細菌「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)」の治療薬をこの男性に試みたところ効き、現在回復に向かっている。他の患者や職員、男性の家族に感染は確認されなかった。

(後略)

アシネトバクターはいちど感染が成立するとなかなか消えないうっとおしい菌です。MRSAもそうですが、感染症が成立したときの病原性は、アシネトバクターのほうが上のような気がします。何をもって多剤耐性菌としているのかよくわからないので何とも云えませんが、そうですね……ニューキノロンとかカルバペネムは当然効かないんだろうな。あとは高世代セフェムもダメだろうな……ABPC/SBTも意外に使えたりするけど、このあたりもきっと耐性。多剤耐性緑膿菌は網のグリコシド、カルバペネム、ニューキノロンの三つに耐性を示すというのが定義になっているけど、こっちはどうなんでしょうか。

で、この記事のいちばんの突っ込みどころ……というか、(医療従事者的に)困ったところは、「別の細菌「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)」の治療薬をこの男性に試みたところ効き、現在回復に向かっている」という部分。基本的に、MRSAの治療薬とアシネトバクターの治療はまったく別物です。VCMダメ、TEICダメ、LZDダメ。MRSAに効く抗生剤の大半が、もともとアシネトバクターに効きません。さて、どちらにも効きそうと云えばABKなんだけど、多剤耐性というからにはアミノグリコシドには耐性なんじゃないかな……?緑膿菌みたいに、AMKはいけるけどGMはダメとか、そんなのかな?(耐性機序が違う)あ、ST合剤も使えるけど、うーん、この場合は賭けのような気がするなあ……

もうちょっと正確な情報が欲しいですね、まいどのことながら。もやもや。