学会の収穫その1。
血液培養ボトルが陽性になってまず考えることは、
- 生えてきた菌はグラム陽性か、グラム陰性か。さらに球菌か、桿菌か。
- グラム陽性球菌なら、ブドウ球菌か、レンサ球菌か。
- レンサ球菌なら、それはStreptococciか、Enterococciか。
- グラム陰性なら、腸内細菌系か、ブドウ糖非発酵系か。
まあ、だいたいこのあたりでしょうか。(嫌気はのぞく)
エントリN0.5 血液培養陽性検体生標本鏡検のススメ
血液培養陽性検体の菌液を染色し、鏡検することで、いろいろなことがわかります。この結果で初期治療が大きく変わりますので、ここでびしっと答えられるとすごく得られるものが大きいです。
- 生えてきた菌はグラム陽性か、グラム陰性か。さらに球菌か、桿菌か。
- 基本的に、鏡検したら形態で見分けることが可能です。嫌気性菌で見分けがつきにくいものもありますが、修行あるのみです(爆)。おおむね臨床状況と組み合わせて考えれば、ほとんどのケースにおいて間違えることはないでしょう。過去にやったことのある失敗例として、Acineto(グラム陰性「桿菌」)をBranhamella?(グラム陰性「球菌」)だと答えてしまったことがあります。ぎゃーす。
- グラム陽性球菌なら、ブドウ球菌か、レンサ球菌か。
- 悟りを開くと、腸球菌とGBSとStreptococciを見分けられると聞きますが、私には無理です(さらに自爆)。やはりわかりにくいものがありますが、ほとんどのケースで間違えることはありません。修行あるのみです。
- レンサ球菌なら、それはStreptococciか、Enterococciか。
- これを鏡検で見分けることはぶっちゃけ困難です。
- Enterococci培養ボトルのなかでぶくぶく太って二連の双球菌状になっていることが多いですし、レンサ球菌は4連以上のレンサになっていることが多いので見分けはつくのですが、例外も多々あるようで、過去の経験上、外すこともよくありました。従って、最近ではEnterococciのセフェム耐性を使ってCMZのセンシディスクを置いています。ついでにオプトヒンディスクも置いておけば、St.pneumoniaeまで鑑別できます。
- このCMZディスクもよくわからない結果を示すことがあり、辺縁のはっきりしないビミョーな阻止円を作ることがあります。このときは要注意(はずすことが多い)
- グラム陰性なら、腸内細菌系か、ブドウ糖非発酵系か。
- ここがミソで、いくつかの性状を組み合わせて、ある程度の確率でどちらかを判断することが出来ると考えられます。
- ガスの産生性があるなら、ほとんどの場合で腸内細菌。嫌気ボトルでガスの産生が旺盛。しかし、ガスの産生がないからといって、非発酵菌であるとは断定できない(ガスを出さない腸内細菌の存在)。
- ここで生標本が登場。スライドグラスに一滴陽性検体を落とし、上からカバーグラスをかけてしまいます。そのまま顕微鏡でGo!
- 血球の流れとは無関係にうじゃうじゃと動き回る菌は、運動性ありと判断できる(と思う)。
- 無秩序にうじゃうじゃ動き回る菌は、大腸菌などの体のあちこちに鞭毛を持つタイプ。
- 一直線に猪突猛進なカワイイやつは、おおむね非発酵菌(ケツに一本だけ鞭毛がある)
- 血球と同じように流されていくやつはコウモリ……じゃない、鞭毛を持たないタイプ。
- ガスが産生されて、運動性がないならKlebsiellaとか?ガス産生がなく、猪突猛進野郎ならPseudomonas?ガス産生ありで無軌道運動野郎なら大腸菌?
- 書いておいてなんだけど、やっぱり修行あるのみか……
客観的に判断できる材料がほしいときに、スライドの生標本はある程度有用かもしれない、というお話でした。主治医と問答してないね。
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