IDATENケースカンファに行ってきたよ

というわけで、毎年恒例となりつつあるIDATENケースカンファに行ってきました。

一年ぶり、三回目の参加でしたが、むちゃくちゃ人間が多くてびっくりしました。参加するたびに人数が増えていくような印象がありますね。去年もいまごろ参加しましたが(去年はむちゃくちゃ寒かったが、今年はとても暑かった)、確実に去年よりは多かったと思います。メーリングリストの参加者は2000人を超えたとか。まあ今回はティアニー先生や青木先生がいらっしゃるということで、そのせいで多かったのかもしれませんが……じつは私はそのクチだったりします(笑)。ティアニー先生の診断入門、持ってます。

症例提示も相変わらずで、とても面白かったです。ただ、やっぱり変化球が多いかな、と。考え方を学ぶためにはすごく勉強になるのですが、私にはちと変化球すぎていまいちピンと来ませんでした。ドクターの考え方を学ぶために参加しているので、それはそれで勉強になったのですが……

いちおう答えは伏せ字(これだけでわかるひとは絶対にいない)

  1. 担癌患者の好酸球増多=肺クリプトコッカス(わかるかこんなの!)
  2. 大使館職員に生じた乳び尿=フィラリア(わかるかこんなの!)
  3. ストロングなステロイドの超長期大量投与例に生じた肩関節痛=化膿性関節炎(これはわかった!でもその後がわからん!)、

フィラリア症はたぶん、知っていればすぐに鑑別に挙がりそうです。知らなければ永遠にわかりそうにありません。そのあたりは勉強になりましたが、乳び尿ひとつとっても、考え方はいろいろあるんだなと思いました。考え方という点では好酸球増多の肺クリプトのほうが勉強になりましたが、あまりにも変化球過ぎてなんとも。化膿性関節炎はさすがにわかりましたが、二度目の再発……といっていいのかどうか、抗酸菌が検出されたというのはよくわかりません。ガフキー号数で云えば6号程度とのことでしたが、通常のラボでのコンタミネーションでここまでの量が混入することは絶対にありません。MGITの菌液を間違えてぶちまけたってんなら、話は変わりますが……CEZに反応するなら起炎菌ではなかったのでしょうが、不思議な検査結果です。

ま、何はともあれ、面白かったので満足でした。青木先生の講演もはじめて拝聴しましたがとても面白く、とくに「感染症医の実力は培養陰性時に現れる」ってのが印象的でした。「耐性菌と死亡率には直接関係がない(だったっけ)」というのはほんとかなと思いますが(多くの研究結果では、耐性菌であることが独立した危険因子であると結論しているものが多いように思う)、ある意味ではそう思います。ごく最近、好中球減少のある患者さんの熱発でP.aeruginosaというべたべたのパターンを経験して悔しい思いをしましたが、そのケースでは感受性のある薬剤を使っているにも関わらずブレイクスルーしたんです。アミノグリコシドの二分割だったのでそのせいでブレイクスルーしたのかとも思いますが、そのせいなのかどうか、CAZ大量に切り替えるのが遅かった。私が検査結果に気がついて主治医に連絡したときにはもう亡くなっていたんですが、感染症で有効な薬剤を投与しているのにお亡くなりになる患者さんの多くが、発見されたときにはすでに手遅れ、という状態です。耐性菌では多くの薬剤が、投与されているのに投与されていないのと同じ状態(耐性だから)なので、それで手遅れになるのかなあというのが最近の感想です。「熱、CRPからの脱却」は、もうこれは文化の違いというか、生物としての根本原理の違いかと思いました。ウチのドクターには、これを云っても通用しません。

つうわけで、全体的に満足して帰ってきたのでした。じつは来月、某所で発表するスライドの下書きの期日が明日なのですが、まだ仕上がっておりません(えっへん!)。いまから、泣きながら仕上げに入ります……