好中球減少時の熱発

化学療法中に好中球減少を来してしまう患者さんは少なくないですが、好中球が減少しまくっているときの熱発は、何をさておき緑膿菌です。誰が何と云おうと緑膿菌。たとえどこから何が出ていても緑膿菌。菌が証明出来なくても緑膿菌……は、云い過ぎかな。でもそれくらい緑膿菌を恐れてください。内科、外科問わず、医師をやっていたら一生に一度はそういう場面に出くわすでしょう。間違っても、40℃の熱発を見て、インフルエンザだなんて考えないでください。たとえキットで陽性になっても緑膿菌です。高度好中球減少を来して緑膿菌が血液培養陽性の症例の25%弱くらいが、そのまま二日と保たずにお亡くなりになってしまいます。

高度に免疫抑制がかかっている患者さんを見ると脊椎反射で「免疫不全」という単語を使いたくなりますが、その「免疫不全」が何なのかを考えましょう。これを考えていない主治医が多すぎる。好中球減少があるなら、まずは緑膿菌をカバーする、これが鉄則です。ほっておいたら絶対にマズい、これはエマージェンシーなのです。Candida?それも重要ですが、好中球減少が短期間ならとりあえずは頭の片隅にとどめておくだけでOKです。なによりCandidaも重要な菌ですが、それでひとはいきなりショックを起こして亡くなったりしません。放射線治療をすると粘膜表面にCandidaが定着したりして患者さんにえらく不快な思いをさせるのですが、だからといってβ-Dグルカンを測りまくる必要性もほとんどありません。頭の片隅にとどめておいたらOK。あまり陽性にはなりません。

とにかく云いたいのは、そういうエマージェンシー時にCRPなんか見んなってこと。CRPが高いからってひとは死にませんが、CRPが低いから大丈夫なんてこともありません。で、血液培養を採ったら即座に緑膿菌をカバー。ためらう理由は何ひとつありません。緑膿菌をカバーしたらその他のたいていの菌はカバー出来ますので、この際、忘れてしまってOK。MRSA?出てきたら不幸ですが、緑膿菌ほど速やかにお亡くなりになることは少ないので、可能性があるならVCMをかぶせて様子を見るのはOKでしょう。たぶん。

とても悔しい思いをしました。緑膿菌は怖いですね……