トンフル続報

そろそろ疑い例の情報を追うのが難しくなってきました。というか、これだけ疑い例がいたら、もう個人で追うことは無理でしょう。それは保健所や病院にも云えることで、マンパワーには限界があります。もともと検疫とか追跡調査ってのは人海戦術的なところがあるので、これを戦術の基本とするのは余裕があるときだけになるでしょう。それ以外は、どこかを切り捨てないといけない。GW前というのが悪かったですね。情報の伝達にもタイムラグがありますし、こういうのは漏れてしまうと意味を為しませんので、そのあたりを考慮してみても、じつはこのあたりがけっこう限界なんじゃないのかと思わないでもないです。

ちなみに、ことの是非はともかくとして、日本人はこういう人海戦術が大好きな気がします。この場合は、漏らさず検査すれば水際で止められるはずだ、という考え方です。私は勝ち目のない戦だと思いますが、実際にカナダの保健当局は、検疫を行うことを検討していないそうです(お願いして実施中)。じつは検疫が有効だというエビデンスはないそうで、潜伏期間があることや症状の出る一日前から感染力があることなどを考慮すると、この網をすり抜ける患者さんが必ずいます。漏らさず検査して侵入を防ごうという思想で実施し始めた検疫でひとりでも漏らしたら、それはやっぱり失敗と表現されるのでしょうか。

それはさすがにかわいそうというか何と云うか……BSEでも全頭検査を主張するのは決まって日本で、どうもこのあたりのマネージメントが日本人は苦手な感じです。医者の云うこと(政府の云うこと、マスコミの云うこと、エラい人の云うこと……つまり「親」の云うこと)をよく聞く人種ではありますが、リスクもそっちにまかせてしまって、責任を丸投げする傾向がある気がします。自分で考えて、自分で責任を取るということをしない民族だなと、さいきんまわりを見ていてもちょこちょこ思うようになりました。

いまのところ、検疫や種々の体制が功を奏しているのか、国内で感染者はいないようです。引き続き、注意してみていく必要はあると思いますが。