膿胸3連発

普段はそんなに見ないんですが、なぜか立て続けに3連発。

膿胸こそはグラム染色の出番です。検体の外観を観察し、グラム染色を見て起炎菌を予想し、主治医に連絡するーー医学的には、これだけのことで治療方針の方向性が決まってきます。とは云っても、使う抗生剤は決まっているんですけどね。

膿胸とは、「胸膜が炎症を起こし、胸腔に膿がたまった状態」です。従って、胸腔を穿刺し、膿性の胸水がひけてきたら膿胸の診断は確定的。その胸水をグラム染色すれば、そのまま起炎菌が判明するという、しごく簡単な話です。おおむね膿胸は細菌性肺炎、胸部の術後に発生することが多いので、起炎菌もそれに応じたものになってきます。いちばんよく見るのは、嫌気性菌による膿胸。いままで見てきた10例足らず程度の経験では、高齢者に市中発症する膿胸はほとんどすべてが誤嚥性肺炎に続発するものでした。従って、そのほとんどが口腔内の常在菌によるものです。代表的な菌種をあげると、Streptococcus、Peptostreptococcus、Fusobacterium、Bacteroidesなどなど。以外にKlebsiellaとか見ませんね。培養でなんとか拾える菌は、このあたりがメインになるかと思います。

治療も自然と嫌気性菌をカバーするものになりますので(というか、そうしないとダメなので)、それなりに嫌気性菌を意識したチョイスになります。ここで間違ってはいけないのが、たとえ細菌検査の結果で嫌気性菌の記載がなくても嫌気性菌をカバーしないとダメだということです。嫌気性菌が絡む膿瘍の細菌検査はすべての菌を拾うことが難しく、報告書に記載されている菌がすべてではない可能性を考慮しないといけません。Bacteroidesまでカバーするのが無難なのかなというのが、とりあえずの感想です。

横隔膜より上の菌であれば、たとえ嫌気性菌であろうとPCGが効くことが多いです。この前はPeptostreptococcusとFusobacteriumだったのですが、これはPCGで治療してすっきり治ったようです(正直びっくりした)。ううむ、なかなか奥が深いというか何と云うか……

グラム染色で見当がついても、何を使ったらいいですかと聞かれてPCGと答える勇気はありません(笑)。やはりABPC/SBTか、それともCTRXか……ぶつぶつ。