免疫不全の怪

よく伝票に、「免疫不全」と書かれて細菌検査がオーダーされます。「ステロイド使用」ってのも多いですね。こっちもそれなりに病態を予想しながら検査をするのですが、「免疫不全」+「β-Dグルカン」などの組み合わせが非常に多く見られます。ある部分では間違ってはいないのですが、経験上、また理論上、ステロイドを使用することで短期にβ-Dグルカンが陽性になることはまずないと思います。測定するだけ無駄とまでは云いませんが、不明熱の鑑別診断としての価値は、一段低いものになるでしょう。

どうもルチンでまわってくる伝票をながめていると、「免疫不全」と「感染症」の関係を正確に理解している主治医がいるのか知らん、と猿のような疑問が湧いてくるのですが……私も云うほど正確に理解しているわけじゃないんですが、chemoを扱う診療科の先生は、ちゃんと理解しておいて欲しいと思います。「好中球減少」+「CMZ」+「AMK」+「発熱」=>「即β-Dグルカン!」というのはやめましょう。どうせやるならエンドトキシン測定もです(あまりおすすめできませんが)。AMK耐性緑膿菌の可能性が考慮されていませんね。抗生剤を入れているのに熱が引かない、これはCandidaだ!……というのは、やっぱりある意味間違ってはいないのですが、間違った考え方です。

その間違いが高じると、IPM/CS,MINO,FLCZという最強爆撃が始まるのですが、うーん、NF患者では仕方がないかなと思わないでもないです。血液培養を取らずにやると泥沼なので、やっぱり血液培養がいちばん信頼性が高いのですが……陽性率の低さで嫌われる傾向があるようです。以前も、血液培養でCandidaと報告したところ、主治医は疑わしそうに唸ったあとに、おもむろにβ-Dグルカンを出してきました。……ううむ、β-Dグルカンよりも血液培養のほうが信用出来るんだけどなァ……

ちなみにそのひとは外科術後でCVC入り患者でした。ま、当たり前か……