ヘパリンロック

カテーテルの生食ロックに関する話なんですが、もう議論されて検討され尽くしたものだと思ってました。

生食ロックとヘパリンロック、いったいどっちが優れているのか、そのエビデンスはあるのか、という話です。透析室から、ヘパリンロックをやめて生食ロックにしたいんだけど、透析のドクターがうんと云ってくれない、何かいい文献はないか、という相談でした。なんでも、エビデンスもないのに生食ロックに変えるなんてできない、エビデンスをもってこい、とか何とか。こういうパターンで「エビデンス」ということばを使うドクターって、エビデンスってことばを、相手を叩きのめすための武器か何かだと勘違いしている気がしますねえ……まあ危険なことはしたくないという心理の現れなんでしょうけど、エビデンスがないなんて簡単に口にして欲しくないなあ。そういや以前、エビデンスを振りかざすドクターのことを「何とかに刃物」って書いたっけ。部署は変われど、本質変わらず……むむむ。

そのドクターは「エビデンスがない」ということを理由に、生食ロックは納得出来ないと主張しているそうなのですが、結論から云えば、エビデンスがないなんてことはありません

Effects of heparin versus saline solution on intermittent infusion device irrigation

    • この研究は生理食塩水と10単位のヘパリン入り生食を比較して、静脈炎の発生と開通性の維持について、差が見られなかったヨ、と主張しています。この研究が示唆していることは、ヘパリンを使わずに生食ロックでも問題ないんじゃないか、ということです。
    • ヘパリンの重要な副作用として、理由は知りませんが、CNSの増殖を助けてしまう、というのがあります。つまり、ヘパリンロックを行うことで、CNSに感染しやすくなる可能性がある、ということです。生食ロックでも静脈炎の発生率に差がないと主張しているので、だったら使いやすい生食ロックでもいいんじゃないの、という理屈ですね。だからといって、不必要な症例に対して、念のため、とかいって濫用していい理由にはなりませんが。

(正直に白状すると、fulltextが手に入らなかったのでabstractしか読んでいません)

CDCのガイドラインでも、ヘパリンロックは否定的に書かれていたと思います。コストも安いんじゃありませんか?(よくは知りませんが)日本ではあまり文献を見ませんが、海外では検討されまくっているので、海外の文献をあさればいいものがいくつか見つかるはずです。

けっこう有名な話だし、エビデンスがないなんて云わないで欲しいなあ……

ちなみに、100単位のヘパリンを使ったら、10単位のヘパリンロックよりも血栓生成率は低かったよ、と報告している研究も読んだことがあります。…理由はよくわからないながらも、刺入部ですごく痛むそうです。反対意見を読むことも重要。まあ、明らかに閉塞症例が増加しないのであれば、現状では生食ロックでいいんじゃないかと私は思っています。