再帰的なツリー

朝っぱらMRSA敗血症の判例記事を読んでいたんですが、判例文ってものすごく論理的で理路整然と書かれていると思うんですが、ここでよく断言出来るなー、という箇所がいくつかあります。読んでいると、ここで断言できたらたしかにらくだよねー、と思わされることしばしば。そこが断言出来ないから苦しいんだよねえ、って感じです。まあ、こんかい読んだ判例は、ちょっと見ていた医師側による責任が大きいとは思いましたが。膣分から出てきた腸球菌が感染症の原因の可能性があると主張するのは……そりゃまあ主張するのは自由ですが、ちょいと医学的に無理がありゃしません?

これだけ院内感染が騒がれている時代に、意外に感染症に無頓着な先生方が多いです。先日、高名な先生が院内で勉強会をしてくださったんですが、Candida感染症後の真菌性眼内炎の可能性についてちょっとだけ触れてくださいました。感染症屋さんとしちゃ当たり前の話なんですが、意外に驚いた先生が多かったようすです。困ったもんだ。当然考えておかなければいけない可能性のひとつですから、眼科コンサルトの事実がカルテ上で確認出来なかったら、裁判になったら確実に負けます。ついでに云えば、初期に受診しても確認出来ないことがあるので、2week後くらいに再受診すればもっといいですね。

ひとつの可能性から始まって、いくつもの可能性が生まれます。その可能性を丹念に潰していかなければならない。そういう地味な仕事が診断という作業の正体なのではないかとも思います。ひとつの可能性にふたつの可能性が付随してくると、最終的には可能性の枝葉はこんな風になるよ、というツリーです。すごいですね。

画像は結城浩氏のTree.javaから拝借しました。