Bacillus subtilis var natto!

ときどき血液培養(+)のボトルから生えてきて頭を悩ませます。

情けない話なんですが、おなじBacillusでもBacillus cereusはよく出てくるのですぐにわかるのですが、こいつは出てくるたびにひっかかります。ひっかかるというか、前回の経験をすっかり忘れて毎回なんだろうと頭をひねるからなんですが、

  1. 6時間程度で血液寒天上に生える露滴状コロニー(ねばねば糸を引く)
  2. カタラーゼ陽性
  3. オキシダーゼ(-)ただし弱い反応あり
  4. グラム染色性は悪く、陽性に染まっている部分と綺麗に抜けて陰性に染まっている部分とが混在
    • 割と綺麗にすっと伸びた桿菌。芽胞は確認出来ない
  5. MacConkey寒天培地に発育なし
  6. 蛇足だが、チョコレート寒天培地で血液寒天よりも発育はいい
  7. 炭酸ガス培養で発育する。好気的にも発育する。嫌気はやってないのでわからない。

このくらいかなぁ……

だいたい血液培養陽性例って、コロニーを見ただけで菌種が推定出来るものですが、グラム染色が当てにならないとどうやって同定したものかと迷います。とりあえず陰性桿菌だと考えて、Macに生えない陰性桿菌ならHaemoやPasteurellaなどが頭に浮かびますが、Haemoは性質上血液寒天培地に生えないので却下、Pasteurellaは匂いとコロニーの様子が違うので却下(ほんとはもっと客観的な証拠を用意すべき。あえていうならグラム染色上の形態が違いすぎる、オキシダーゼが違う)、Actinobacillusは発育スピードの点で却下(もっと時間がかかるはず)、Eikenellaは見ただけで違う(オキシダーゼも違う)、なんだかいわゆるHACEKグループとは違う感じです。すると、どうしたものかと考えます。血液培養だし、無視するわけにはいかないし。

グラム陰性菌だという前提が間違っているんだと考えると、やはり筆頭はBacillusでしょう。でも私はBacillusを鑑別する方法なんて覚えちゃいないので、そこでギブアップ。めんどくさいので、自動機器にかけてしまいました。出てきた菌名は、Bacillus subtilis。枯草菌というやつです。採血する時の汚染菌ですね……む、むなしい。あれだけ悩んだのに……

いちおう大きく矛盾はしないと思って、それで最終報告にしました。ねばねばと糸を引くので、主治医と「これは納豆菌に違いない!」とか冗談を云っていたんですが、実際に納豆菌だったのかどうかは知りません(笑)。