まるくどでかいフライパン

抗生剤のイメージです。PCGは槍やアイスピックなどの尖った細い棒のイメージで、広域抗生剤になればなるほど、どんどんイメージが鈍器に近づいていきます。PCGを使いこなすには、ちゃんと狙いを定めて、適切なタイミングで突きこむ必要があるわけです。カルバペネムは「感染症界のナパーム弾」ですが、イメージとしてはちょうど丸くとげとげのついた鉄球を思い起こさせます(モーニングスターと云って通じるならそれが早い)。で、容疑者を一列に並べて、疑わしいからという理由で順繰りに殴っていくわけです。おお、にゃんとも野蛮な行為ですね(苦笑)。相手が犯罪者集団ならそれもやむなしかもしれませんが、そのなかには一般人も混じっています。場合によっては悪さをするかもしれない、暴走族みたいなひとたちも混じっているかもしれません。カルバペネム系薬剤というのは、抗生剤の性質としてそういう乱暴さが潜んでいます。

ときには必要ですが、それって最後の手段ですよね。きょうもチエダラで改善しないからMRSAに違いないと云ってVCMを垂らして、それでも改善しないから抗真菌薬なんていうパターンを見ました。論理的に考えようと思っても、もうここからじゃ何が起きても不思議ではありません。というか、もう何が起こっているかなんてわからない。肺挫傷があるので、無気肺があっても不思議ではない。肺炎だというけど、じつは肺炎じゃないかもしれない。抗生剤を使って焼け野原になってから培養して、何も生えてこなかったときに何を使ったらいいかなんて、答えられるワケありません。抗生剤を切っていいのかどうかも評価出来ない。培養は抗生剤を垂らす前にやりましょう。約束だぜ!

まあこのひとは全身骨折があって、いたるところに外傷があるクリティカルな人だからしかたがないのかもしれないけど……外科はやっぱりクリティカルな症例ほど難しいですね。