一気に続いた髄膜炎

小さい子供の髄膜炎は、見ていて気持ちのいいものではありません。

年始早々、お気の毒なことだと思います。早くよくなられることを祈っております。一例はHaemophilus influenzae(BLNAR株)による髄膜炎、もう一例はStreptococcus pneumoniae(PRSP株)による髄膜炎でした。どちらも耐性菌です。耐性菌による髄膜炎が増えてきましたね。困ったことに、もうこういった耐性菌は市中に蔓延しております。問題は深刻です。もともと髄膜炎は抗生剤が届きにくい部位が感染症を起こしていますので自然抗生剤が効きにくいのですが、さらに耐性菌による感染症ということで、治療に難渋することが多いと思います。耐性がなければ治療出来るはずだったのに、耐性菌だったから命を落とす、ということが往々にして起こりえます。

こんかいは最初からカルバペネムをガンガン垂らしたので、それなりに効いたようです。PAPM/BPですね。髄膜炎に使うカルバペネムと云えばもうPAPM/BPがほとんどになってしまいました(PAPM/BPにCTXをかませる)。私もだんだんそういう認識をするようになってきてしまいましたが、正しい認識かどうかはわかりません。BLNARによる髄膜炎ならMEPMが使えるんじゃないかと思いますが、IPM/CSには荷が思いかなと思いますし、ひとつの病院でカルバペネムが3つもあるというのはいかがかと思っていましたが、やっぱりちょっと二つに絞るのも怖いかなと思い始めてきたところです。毒された、のかもしれませんが。

こういった耐性菌対策というのは、環境問題に似ていますね。これは以前にも書いた記憶があります。地域ぐるみで対策しなければ、とても効果は望めない。しかし、抗生剤について、ちゃんとした使い方を知っている医師はほとんどいないんじゃないかと思います(もちろん私を含めてです)。しかし、知識を身につければ解決するのか、と云われれば、たぶんそれは違うのだと思いますね。医師が過剰診療(あえて過剰と云っています)するのは、漏れたときが恐ろしいから、です。訴訟とかそういう問題もありますが、替えのきかない命を前にして、ある意味、真摯に診療しているのだとも云えます。知識だけで、日頃やってきた抗生剤処方をやめることができるのか(しかもちゃんと不必要な症例を見極めて)、これは難しいと思いますね。経験が絶対に必要です。あえて云うなら、そうやって育ってきた医師の存在が必要で、その医師が中心になって、ちゃんとした経験と知識を広めていかなくっちゃいけない。教育機関である大学から、変えていく必要があると思います。感染症のかの字も知らないような医師が、なんと多いことか。常在菌をやっきになって叩いている主治医を見たときには、目の前がまっくらになるかと思いました(喀痰の常在菌、誤嚥性肺炎ではない実話です)。

あとモンスター化した一般の方々の、節操のない要求をなんとかしないといけません。さいきん、あえて云うなら「図に乗った」ひとが多いように思います。サービスを受けられることが当たり前、というのは、傲慢ではありませんか?品格を失った、変な要求をするひとが多くなったように思います。どうやら、医療機関の不正や医療事故、カルテ改ざんなどに対する不信感もそれに拍車をかけているように思いますが、まあ現在の医療を崩壊させた一端は、確実にマスコミにもあると思いますね。そもそも医学的に常に起こりえる事例まで医療「事故」に含めてしまうのはどうなのかなあと思わないでもないです。