監視の頻度7

平均在室日数が、ICUに患者さんがとどまっている、平均化された日数です。いろんな患者さんがいますので、長期化したり短期化したりするのはかなり外的要因に左右されるのではないかと思われます。これは指標としてはあまりよくないかもしれないと考えるわけです。そこで別の指標も考えて見ました。

これまた不謹慎な話で申し訳ないのですが、製造業において、出荷の遅れたオーダーというのは明らかな損失です。当たり前の話ですが。どんなものであれ、この「遅れ」、というのは、じつはかなり大きな損失になる可能性を秘めています。というわけで、この遅れを定量化できないものだろうか、と思うわけですね。その病院で練られてよく標準化されたクリニカルパスから何日遅れたのか(つまりICUから出る予定が何日遅れたのか)を単純に足し算して、それを一ヶ月ごとにまとめたものを、累積遅延日数として指標に出来ないかなと思います。平均在室日数は出来るだけ低い数字を目指し、累積遅延日数は0を目指す。

よく「DPCになると、十分に治療されていない患者を放り出す傾向が出てくるんじゃないか」という議論は耳にします。実際、そういう傾向がある、ということも耳にしますが、そういう病院は「患者(エンドユーザ)の満足」を損ねていますので、経営策としては愚策です。そのツケはいずれ必ず自分に返ってくる。平均在室日数と累積遅延日数を指標に考えた時、まず起こりうるのは「ICUが自分の評価を高めるために治療不十分な患者を放り出すのではないか」という懸念です。これには、クリニカルパスに「退室条件」をしっかり明記しておき、「退室条件を満たさずに退室した患者」の検討をすることで防ぐことが出来るのかなと思います。

また、受け手側(つまり一般病棟)の都合でICU内に患者が留まらざるを得ないかもしれません。その場合、ICUは自分のところ以外の要因によって、不利な評価を下されることになりかねない。これはちょっと問題かなとは思います。これは病院全体をチェーンとして考えた場合のボトルネックがICU以外に存在するかもしれないので、そっちを解決してやる必要がある。まあいまそこまで考えるのはやりすぎかなとも思いますが、通常、そういうことにはならないんじゃないかと思っています。根拠ないですが。

というわけで、感染対策で感染が減った時の経済効果は、べつに抗生剤を使わなくてすむとかじゃなくて、そういう潜在的な損失を回避できるというところにも見出せるのではないかと考えた次第です。

(ちなみに、DPC条件下の病院ではICD10コーディングされた病名に対して支払われる医療費と遅延日数を掛け算して金銭的な(そして感覚的な)損失を計算してやろうかとも思いましたが、ふたつの理由でやめました。製造業では10000円の未出荷オーダーと10円の未出荷オーダーでは潜在的な損失は全然違いますが、病院では10000円の患者さんと10円の患者さん、どちらも同じ患者さんで区別することは出来ないということ(エンドユーザの満足)。そのような評価尺度を用いた時、10000円の患者さんを優先しようという結論になってしまうわけですね。そしてそういう考え方はあまりにも倫理観にもとるということです)