監視の頻度6

ところで、ネットでたまに、「うちではこんなことやってます」みたいな感染対策の企画書がのっけられているのをみるんですが、その目標のところによく「患者ケアに貢献する」って書かれているんですね。「患者ケアに貢献する」かあ……と思って見るんですが、いまいちぴんとこないものがあります。私たちは医療従事者ですから、いちおうそれなりに医療倫理ってもんがあります。この倫理観が健全に働いている人ほど、「お金のため」という目的には拒絶反応を示すようです。

あ、ここで顔をしかめたひとがいるんだろうなあ(苦笑)。

病院がお金をもうけるため活動しています、ってのは、とても聞こえが悪いんですが、別に悪いことじゃないと思うんですよね。どうも日本人って、「お金儲け」というと「越後屋」を思い出すらしく、「お金儲け」=「悪いことをしてる」というイメージがとても根強いようです。ホリエモンとか、村上ファンドとか、そういうイメージですね。お金儲け、と聞くと、何か悪いことをして荒稼ぎをしている、という印象があるようです。だから医療サービスを提供している病院が、お金儲けのために医療を提供しています、ってのは、非常に聞こえが悪い。どころか、無償で尽くすべき、なんて考えているとしか思えないクレーマーすらちらほらいます。お金儲け、ってイメージ悪いんですよね。

病院にせよ経済活動をしていることには違いないわけで、そのためにはある程度「お金儲けの視点」は必要ではないかと思うわけです。感染対策がお金儲けのためです、っていうのはひどく落ち着かない話ですが、そういう視点で考えていく必要はあると思います。とくに事務屋さんは「院内での活動を、経済的なメリットで評価する」ので、感染対策も経済的に評価しないといけない。従って感染対策の目標も、経済的に評価できるものでなければならないと思います。でないと、どれだけ成果が上がっているのか、経理が評価してくれないからです。評価されなければ、予算が削られます。従って人員が削減され、最終的にはマンパワー不足に陥ります。すると、もともと「仕事の効率を落としてしまう」感染対策を誰も実施しなくなってしまう。またはそういう手間のかかる対策について、文句が出るようになるでしょう。そうなると泥沼で、かなり強固な悪循環になります。

私がとりあえず頭のなかで考えたのは、ICUみたいな小規模モデルです。SSIなどですね。たとえばSSIサーベイランスの実施目標は、「感染率を計算することによって術後感染を評価、改善し、平均在室日数を短縮すること」あたりに落ち着くかと思います。どうでしょうか。術後感染は平均在院日数を長期化させる重要な要素の一つですので、これを短期化することでICUの患者を回転させるわけです。ICUの平均在室日数は感染だけに左右されているわけではありませんが、問題ないのではないかと思います。