患者になった検査技師3

少し疫学めいたことを書いてみましょうか。

まず結核の罹患率の高い地域があります。一番有名なのは、大阪府。具体的にどこだとはいいませんが、きわめて有名な地域がありますね。実は東京も一部で罹患率が高いことが知られています。愛知県も高い。都市部に偏在する傾向があるのは呼吸器官系の感染症の常だと云ってもいいでしょう。働く人で受診の遅れが目立ちますので、そういったひとたちが、人口が密集した都市部でごほごほやって、そこから感染が広がっていくわけです。まあ、だから新型インフルエンザも結核も、似たようなものなんですね。インフルエンザはわっと症状が出てすっと消えていくので流行がありますが、結核は静かに広がって比較的長期間症状が持続しますのでなかなか消えません。結核の根絶がムズカシイ理由のひとつでしょう。

かつては亡国病とまで云われた結核です。どうやらその時代のひとたちにはいまだそのときの記憶が残っているのか、結核のイメージはすこぶる悪いようです。結核は「感染症」ですので近くにいたら感染するということ、昔は感染したら必ず死亡しましたので、「不治の病」のイメージが強いということ、このあたりで結核のイメージはすこぶる悪い。ことに感染症というのがタチが悪いなとは思います。患者は感染源ですから、いちど結核患者が出たらさらなる感染者がいないかどうか、接触者検診をしないといけない。保健師の方にそのような意図はありませんが、まわりからの扱われ方が「菌をまき散らした犯人」みたいな扱いを受けるのが辛いです。マスクをしていないと、まるでテロリストみたいな扱いを受けます(苦笑)。私の場合、退院してからスーパーで買い物をしているところを目撃されたらしく、後日「なぜマスクをしていないのか」などと云われたことがありますね。マスクをする必要性がないからです、と嫌みたっぷりに答えてやりたいところですが、そこまでの度胸はありませんでした(笑)。

エチケットとして長時間密閉されるような映画館は避けていますし、咳が出るときはマスクをします(私の咳はいまのところ例外なく咽頭痛によるものですが)。まあ用事があって新幹線を使わざるを得なかったときはマスクを……そういえばしてなかったな(汗)。まあ、排菌されていないのであれば、患者の体調さえ許せば結核患者とて一般人と変わりません。免疫不全患者がいっぱいいるような病棟をうろつくなんてのは論外ですが、神経質に取り扱われてテロリスト扱いされるのもちと業腹です。結核を患った医師を知っていますが、「犯人扱いされるのがいちばんつらい」とまわりに漏らしていたそうです。気持ちはわかります。

退院した結核患者に感染性はまずありません。短期間に再燃するひともいますが、ごく例外だと考えます。そもそも感染性がないから(そして患者の事情が許すから)退院してきているわけですが、医療従事者でも結核と聞くだけで身構えてしまうようです。ま、当然の反応ですけどね。

さいわい(これは本当にさいわいなことに)、私の友人でそういう感情的な反応を示すひとはひとりもいませんでした。これは本当にありがたかった。お祝いにご飯を食べにいこうと云ってくれる人がほとんどで、このあたりで私は本当に救われたのでした。