患者になった検査技師2

さて、ひっぱっても仕方がないのでずばり書いてしまいますが、私が罹患した感染症は「結核」でした。まあ、予想通りというか何と云うか……いつもは薄っぺらい健康診断の結果がやけに分厚かったあのときに、私は「自分がとうとう結核に罹患したんだ」という、一種覚悟のようなものを固めました(笑)。健康診断の結果は、「S6に浸潤影、要精査」とのこと。ああ、やっぱり結核か……という感じでした。自覚症状は微熱くらいで、咳・痰、両方ともありませんでしたが、咳も痰もない結核なんていくらでもあります。微熱が主症状で、寝汗をかくくらい?健康診断で指摘されなければ、ずっとひどくなるまで気がつかなかったでしょう。もしかしたら、肺が致命的にやられるまで気がつかなかったかもしれませんし、思ったよりもはやく咳が出て、おかしいと気がついたかもしれません。どちらにせよ、私はラッキィだったと云えるでしょう。

一般的に、長期間続く咳、痰、微熱、寝汗、体重減少などは結核を疑わせますが、決め手になる症状はないと云ってもいいのではないかと思います。一般的には喀痰検査などで結核菌を検出することで確定診断になりますが、じゃあ結核菌が出てこない結核があるのかと云われれば、そんな結核もばっちり存在します。結核菌が出てこないけど、臨床症状はばっちり結核、というパターンです。何ひとつ決め手がないんですね。感染症の中ではムズカシイ部類に入る感染症なのです。この検査が陰性だったら絶対大丈夫、という検査がありません。従って、フォローする期間がすごく長いのも特徴です。

ところで、結核が過去の病気だと思っている人が大勢いるようです。医療従事者のなかにも(無意識的に)そう思っているらしいひとがいて、困ったもんだと思います。結核は人類が経験した最大規模の感染症のひとつであり、いまだ現役バリバリの感染症なのです。まわりで結核の人なんか見たことない、ですか?じつは日本は「結核後進国」として有名で、人口10万人対で新規罹患率を見ると、日本では20前後、先進諸国は4前後と、先進国グループの中では大きく水をあけられてしまっています(こういった感染症関係の保健衛生については、日本はすこぶる弱い)。つまり、「結核は終わった感染症じゃない」、ということです。決して、過去の感染症ではない。しかも外国と比べて5倍も多い、日本では比較的よく見られる感染症なのです。おお、怖い。

唯一の救いは、それほど凶悪な耐性菌がまだマレな点かも知れません。個人的にはEMB耐性菌しか見たことがありませんが、これもマイクロタイター法を使っているが故の偽陽性の可能性もありますし、それ以外の耐性を見たことがないので、私の周囲では耐性菌は比較的稀な存在です。でも日本という地域で考えた場合、ちょっと昔のデータですが(たしか平成11年だったっけ?)、INH耐性率は4%を超えています。CDCはINH耐性率4%を超えている地域ではファーストライン4剤を併用して治療することを推奨していますので、これに従えば、日本ではファーストライン4剤で治療することになりますね。もっとも、CDCがそんなこと云っているなんて、誰も気にはしてないと思いますが。