検査が陰性だったら、この疾患は否定的です、というヤツですね。
たとえば、赤痢アメーバ抗体なんかは感度が99%と非常によく出来ており、この赤痢アメーバ抗体が陰性であれば、このテの疾患は否定的です。感度が高いため、疾患を漏らさず拾い上げるわけですね。拾い漏らすことが少ないので、こういった検査で陰性であれば、とりあえずその疾患は頭から外して、次の鑑別を検討してもいいのではないかと思います。
ところが、CDテストなんかは感度が80%くらいしかないんですね。どこのメーカとは云いませんが(笑)、みんな使っているアレです。メーカの公称ではもっと感度がいいんですが、感覚的にはそのくらいです。すると、10人陽性患者を検査をしたら、2人は見逃してしまう。これは偽陰性を出す、ということです。陽性患者を見逃してしまうので怖いのですが、これが検査の限界というものですね。CDテストが陰性だったのでCDADは否定的です、というコメントを聞きますが、まったくの間違いです。臨床的に疑わしければ、十分にCDADの可能性があります。
疾患あり | 疾患なし | ||
検査(+) | 72 | 0 | 72 |
検査(-) | 18 | 10 | 28 |
90 | 10 | 100 |
仮にCDADの臨床症状がそろいまくっている患者さんがいたとして、その患者さんがCDADを持っている可能性が9割あると仮定しましょう。CDテストの感度は80%、特異度は99%とします。そう考えると、上記テーブルのようになります。で、このテーブルから検査(-)でなおかつ疾患(+)である可能性を計算すると、18/28=0.64となるわけです。やっぱりまだ十分可能性があるんですよね。もちろん、CDテストだけでCDADを否定することは出来ません。
仮に感度を99%にすると、ぐっと可能性は小さくなります。このぐらい小さくなって、それでももろもろの条件を考慮して初めて、否定的です、と云えるわけですよね。ひとつの検査で疾患を否定出来るものは、なかなかないと思った方がいいです。レントゲンが正常だから肺炎は否定的です、とか、よく聞く話。
「誰も教えてくれなかった診断学」という本が名著です。上記の例は、ここから取らせていただきました。診断学の本ですが、検査技師なら必須の本だと思います。
誰も教えてくれなかった診断学―患者の言葉から診断仮説をどう作るか
- 作者: 野口善令,福原俊一
- 出版社/メーカー: 医学書院
- 発売日: 2008/04/01
- メディア: 単行本
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