熱源を探せ

不明熱検索の三種の神器は「胸部レントゲン」「血液培養」「尿培養」ってのは有名な話(?)ですが、これが意外におざなりになっている気がします。血液培養が陽性、グラム陰性桿菌がグラム染色で見られました、さてフォーカスはどこでしょう?別にフォーカスを特定しなくてもIPM/CSを突っ込めばたいがい治るんですが、ミソも糞もいっしょというのは様にならないと思います。まあ、様になったところで意味なんかないんですが……でもだからこそ、「なんでチエナム使うんですか」という質問に「知恵がないからです」なんてブラックジョークが成立するわけですね(苦笑)。ちなみに、これ云ったのは私じゃないですよ?

グラム陰性桿菌が血液培養から出てきたら、うーん、やっぱり尿路がいちばん可能性が高いかなぁと思いますね。あと、お腹かな。尿路だったらとりあえず抗生剤で問題なさげですが(使う抗生剤を考えるときに尿のグラム染色を参考にするべきだとは思いますが)、お腹だったときに問題になりそうですよね。お腹は問題多いですし……何はともあれ、考え方はほとんど共通です。微生物と臓器を特定して、抗生剤で叩く、っと。熱源が分からないから=広域抗生剤という図式はある意味当然なんですが、じつはわからないんじゃなくって、検索してないってことがよくあります。血液培養もせずに熱源がわからないってのは、ないんじゃないかなあ……

入院中のご老人が熱発するとき、「胸部レントゲン」が汚い場合は誤嚥性肺炎を思わせます。この場合は緑膿菌もカバーしないとダメかな?ここがモダダラの出番ですよね(逆に云えば、コレ以外に出番ないですね)。尿路カテーテルの入っている場合は尿路感染症、女性の場合も尿路感染症、カテーテルが入っている場合はカテ感染、好中球減少がある場合は緑膿菌と真菌感染症あたり?いろいろ指摘するとたいてい当たるんですが、別に脊椎反射で考えても高確率で当たります(当たっちゃいます)。熱源を探すといろいろいいことがあると思うので、積極的に考えてみるといいんじゃないかと思うことしきりです。

ちなみに、この患者さん易感染性患者だから、といって考えるのをやめちゃっているひとがいっぱいいます。とくにステロイドを使いながらβ-Dグルカンを頻繁に測定するひとがいますが、はたしてそれほど意味があるのでしょうか?個人的には、CVカテーテルが入っている症例、好中球減少がある症例(そしてたいていはカテーテルがある)以外で、つまりもろに意外な予想範疇外の患者でグルカンが強陽性になった症例をあまり見たことがありません。外来でグルカンを測定することにも、おそらく意味はありません。医療費の無駄遣いでしょう。

ああ、そうそう、お年寄りが意識不明になったとき、血圧である程度原因を切り分けるってのは有効なようです。血圧が高ければ頭蓋内病変、血圧が低ければ敗血症(感染症)、ですね。云われてみれば納得出来るんですが、ですのであわててCTへ駆け込む前に、血液培養を二セット採ってくださいね、ということになります。これは熱源を探せというより、原因を探せ、ですが、これってすごく基本的なことですよね。