大量調理施設衛生管理マニュアルの怪

厚生労働省の出しているマニュアルのひとつに「大量調理施設衛生管理マニュアル」というのがあって、こいつが調理者の月一回の検便を規定しているようです。6月18日に改定になったようですが、改定内容がびっくりで、けっこう困ったことになっています。

いままでは「腸管出血性大腸菌O157」という表記だったのが、「腸管出血性大腸菌」という表記に変更になっていますので、ようするにO157以外のEHEC全般について、検査しないといけないということになりますよね。10月〜3月の間は、必要に応じて、ノロのチェックもしなさいと書かれています。さらにノロの感染が出たら、リアルタイムPCRなどの高感度の方法で陰性化を確認しなさい(表記としては「望ましい」)とも。まあノロのチェックは必要に応じて、ということですが、だんだん混沌としてきましたねー。なんとなく時代に逆行しているというような気もしないでもないですが、まあ厚生労働省がこうやってお達しだしてるんだし、従わないとダメだよなーって思います。さて、コストをどうやって押さえるかが問題ですよね。

O157が問題だった時はO抗原検査でO157を確実にひっかけられたらよかったんですよね。O157はかなりの高率でベロを産生していますので、それでほとんど問題がなかった。こんかいはEHEC全般と云われているわけですが、べつにO157だけがEHECというわけじゃない、O26だって、O111だって、菌株によってはベロ毒素を産生します。ここの、菌株によっては、というのがミソで、べつにO26にしてもO111にしても100%産生しているわけじゃない。産生していなければ、O111だってO26だって、EHECとはいいません(云わないと思います)。O157にはソルビトール遅分解という特徴があり、それを利用した分離培地が多く存在しますが、O26やO111には専用の適切な分離培地がなく、絨毯爆撃式に検査していかなければなりません。そのあたりを考えると、やはりエンテロヘモリジンでスクリーニング、というのが妥当な手段、ということになるのでしょうか。うーん、参ったなあ。あの培地、やたら高いんだけどなあ。


いつ保菌するかもわからないのに、月一回の検便が本当に役に立つのでしょうか?たとえば、検査した翌日にサルモネラにかかって保菌したら?手洗いは徹底されているとは思いますが、汚い手で調理して黄色ブドウ球菌の食中毒を出す可能性もありえますよね。しょっちゅう食中毒事件を起こすCampylobacterは、ほとんどの場合、鶏という素材が菌に汚染されています。非常に感染力の強いノロは仕方がない面もあるかなと思いますが、それにしても手洗いを徹底していれば防げる面はあるわけで、検便ってほんとに必要なのかなとよく思います。

にしても、やたらコストがかかるようになっちゃったよなあ……