スカイクロラ考・キルドレ

ネタバレちっくなネタ満載です。読みたくない人は読むべからず!

さて、ネタバレ警報です。見るなら読むな、読むなら見るな(笑)。

キルドレはChildrenなわけですから、「子供」なんですよね。この「子供」を現代の若者に重ねる見方は、個人的な趣味としてあまり好みません。たとえ監督がそういう意図で作っていたとしても、です。ある程度はその通りだと思いますが、キルドレが現代の若者だとすると、劇中の「子供」であることの意味がズレてくるんじゃないかと思いますしね。

ところで、劇中でキルドレどうしが名前で呼び合うシーンはどのくらいあったでしょうか?たぶん、名前を確認するほんのわずかなシーンしかなかったんじゃないかと思います。予備知識のない初見のひとは、主人公の名前すらよくわからないというひとも多かったんじゃないでしょうか?

これはどうにも、キルドレどうしの心の壁の現れのように感じてしまいます。戦死しないかぎり死なない人間であるキルドレたちは、もちろん戦死したら「死ぬ」わけです。そして彼らの現実として、死ねば「次」が赴任してくる。「明日死ぬかもしれないのに、大人になる必要ってあるんでしょうか」というのはユーイチのセリフですが、明日死ぬかもしれない彼らは、どうにも個を個として見ていないような気がする。彼らにとっては、「僕」と「あなた」がいて、そしてそれだけで世界が成立している、そんな気がする。それがたぶん、キルドレたちの関係性の全てなのではないかという、そんな気がします。地上では、「僕とあなた」。空でもやはり、「僕とあなた」なのですね。

この物語の最大のキモは、否応無しに戦争に駆り出されているという悲惨な状況のはずなのに、キルドレたちは実はぜんぜん嫌がってないじゃん、ということです。三ツ矢には「私はいつから人を殺しているんだろう」というせりふがありますが、それでもそれは「個としての自分」が見いだせない状況を嘆いてのセリフであって、別に人を殺していることに対して葛藤しているわけじゃない。もしそうなら、それは人を殺しているという悩みが前面に出てくるはずなんですね。彼らは状況を受け入れ、一見老成しているように見えますが、じつはそんなことはぜんっぜんどうでもいい、ただの子供だということです。少なくとも、ユーイチはそうだと思いますね。