続々続々・点滴作り置き

さて、結論はどうやら前回書いた通りのようですが、ここで「はい、そうですか」と納得してしまうのは考察屋さんとして名がすたるっちゅうもんです。まあ、別にすたって困る名前は持ち合わせちゃおりませんが……

点滴の作り置きはもちろんいろんな点でダメなのですが、12時間程度の作り置き程度なら、じつはどこの病院でも似たような状況が発生しているのでは?というのが今回の疑問点。PCGも12時間持続点滴用法がありますけど、たとえばこのPCG12時間持続点滴にセラチアが混入しても、同じ状況が起きるわけです(PCGは抗生剤ですが、セラチアにはカケラも効きません)。うーん、まあ、そこにマンニトールみたいな糖が添加されていたりしたら(バッグに混注できるかどうかは知りませんが)、夏場だとほとんど同じ状況になりますよね。困ったもんだ。意図せずとも、似たような状況はいくらでも起きうるわけですよね。持続点滴する薬剤はあると思いますし、ヘパリンのなかでも微生物は増えたりするわけですしね。

そう考えると、点滴の作り置きそのものが「すっげえ悪」というわけでもなさそうだ、と思うわけですね。いや、ダメなんですよ?点滴の作り置きはリスキィですから、避けられるリスクをあえて踏む理由はまったくないわけで、その意味では点滴の作り置きはよくありません。ただ、諸悪の根源は点滴の作り置きじゃねーなー、って思うだけです。たぶん、点滴の作り置きをしていなくても、同じように患者は発生しただろうな、と思います。たとえば、朝作っておいた点滴を、昼ぐらいに使っても調子を崩す患者はいただろうな、って。ただこれほどの大事にはならなかったとは思いますが、規模の違いはあれども、いずれ死者を出すような感染症を引き起こしただろうな、と思います。諸悪の根源は、ようするにセラチアに汚染された綿であり、消毒しているつもりが菌をぬったくってた、ということなのですから。

ようは点滴の作り置き云々も一役買っていることは間違いないながらも、じつは諸悪の根源は感染管理の教科書には必ず事例として載せられている「消毒用綿の汚染」だったわけです。点滴は無菌状態が保たれていればそこそこの間は無菌状態が保たれますので(まあ、その無菌操作そのものが難しいわけですが)、綿が汚染されてさえいなければ、まああそこまで大規模の感染症を起こしたりはしなかっただろうな、と思います。うちは点滴の作り置きしていないから大丈夫、という理屈はまったく通用しません。感染管理の基本に立ち返ることがやっぱり王道なんだろうなあと思います。