続々・点滴作り置き

とりあえず、この事件は「点滴で増殖したセラチアによる血流感染症」という結論になりつつあるようです。

一部報道で「もうけ主義」などと報道されたそうですが、ちょっと違うんじゃないかなぁと思います。あくまで個人的に思うだけですが、かなり繁盛している診療所のようですし、日々の診療で患者さんを効率よくさばいていくために作り置きを始めたんでしょう。感染に対する意識が甘かったという指摘があるようですが、これに関してはちょっと申し開きのしようがないと思います。タオルが布タオルで使い回しだったようですので、まずここが汚染の大元かな、という感じですね。セラチアは健常人にとってはほとんど無害な菌で、たとえ口から入ったところでほとんど問題になりません。ただ、点滴で直接血中に打ち込まれたら、免疫の強い弱いに関係なく、ひとたまりもないと思います。それが原因で亡くなられるかどうかは、菌量や免疫状態が大きく関与するとは思いますが、多かれ少なかれ、症状は出るでしょうね。ううう、想像したらぞっとするなあ。

報道では患者が9日に集中しているらしいと聞いていますので、これもまた作り置きの点滴中で増殖した可能性を強く示唆するものと考えます。温度管理が出来ていない部屋で一日中ほったらかしにされていたわけで、作り置きした汚染点滴内のセラチアがそのときに増殖したんでしょう。流れとしては、

  1. どっかから拾ってきたセラチアがタオルについた
  2. 交換されていないタオルでセラチアがゆっくり増殖
  3. 増殖したセラチアが調剤担当の看護師の指に
  4. 看護師の指から点滴へ
  5. 休診日の作り置きされた点滴の中で過増殖
  6. セラチア菌液と化した点滴が患者さんに使用される、

という流れでしょう。調べてみると、メチコバールのなかにマンニトールが含まれており、セラチアはたしかマンニトールを分解したと思いますので(うろ覚え)、マンニトールを栄養源にして点滴内で増殖した可能性が高いと考えます。

点滴の作り置きは法令等で規制されているわけではありませんが、臨床的、感染管理的にかなり罪深い行為であることは疑う余地がありません。作り置き自体は患者を効率よく捌くメリットがありますが、このメリットのために院内感染というデメリットを無視出来るはずもなく、通常、感染管理意識の高い病院では作り置きはないと思います。ただ、待ち時間が長いと文句を云う患者さんは非常に多く、なかにはそれでやっかいなトラブルになることもあります。そういったクレームを回避するための作り置きだったんだろうなぁと思う次第です。まあ、免罪符にはなりませんけどね……