培地に生えないグラム陰性短桿菌

メーリングリストでも発言があったのですが、やはり喀痰のグラム染色でグラム陰性の短桿菌を認め、なおかつHaemophilusの発育を認めない場合、これは百日咳を想定すべき、とのことです。これは検査室の仕事になろうかと思いますので、感染症カテゴリで書いておこうかな、と。さいきん成人の百日咳が増加傾向にあるようなので、外来での慢性の咳の鑑別には、つねに百日咳を意識しておく必要があるのではないかと思います。メモメモ。

私自身、昨年の9月ごろに培地に生えてこないグラム陰性短桿菌感染症を経験しました。染色所見ではHaemophilusだと思ったのですが、私はたばこを吸いませんし、慢性の呼吸器疾患もありません。最終的な診断は気管支炎だったのですが、自分自身、Haemophilus感染症を発症する要因が思い当たらず、首を傾げていました(そのあたりは日記として記録があります)。結局、培地にはHaemophilusの発育はほとんどなく、当然思い当たった百日咳の培養をやってみたかったんですが(臨床じゃ滅多に出会えませんよ、喀痰から百日咳パターンは)、培地が常備されておらず、どうしようもありませんでした。結局、後鼻漏や気管支炎の治りかけ、みたいなお決まりの説明を受けてそれっきりなのですが、面白いことにその席は頑強にも3ヶ月ほど続き、あとから思い返してみると、ほんとに「百日咳」だったわけです。あっはっは。

私のこれが百日咳だったかどうかは永遠に闇の彼方ですが、百日咳は日常、よく見過ごされている疾患のひとつで、なんと医者でさえ子供の病気だと思っているひとがいます。違うんだなあ。慢性の咳に安易に抗生剤を処方するからマスクされちゃって、見過ごされちゃってるだけなんだよなあ。中途半端に投与されたマクロライドなんかが中途半端に効いちゃって、「なかなか治らない咳だねえ」とか云われて、そのまま経過観察、いずれ治る、の経過をたどっているだけなんだよなあ。咳をしている患者さんはマジでつらいので、そのあたりの訴えを詳細に聞いていれば百日咳は絶対に外せないと思うんですけどね……

ちなみに、私の喀痰のグラム染色はグラム陰性の短桿菌で、何度も書いている通り、Haemoと見分けがつきませんでした。じつはPasteurella気管支炎を見たことがありますが、これもグラム陰性の短桿菌で、Haemophilusと区別がつきませんでした。同時期、Pasteurellaの猫引っ掻き病を経験しましたが、こっちのPasteurellaは細長く伸びていて、多形成気味でした。面白いですね。