理不尽な髄膜炎

きょうもHaemophilus influenzae type bによる髄膜炎を見た。検査技師になって細菌検査にたずさわるようになって、これでたぶん6例目だと思う。助かる子もいたし、助からない子もいた。まったくもって理不尽な話しだが、後遺症が残ってしまった子だっている。そう、私は子、と云った。このHaemophilus髄膜炎を発症するほとんどの患者は、4歳以下の乳幼児である。

Haemophilus influenzae type bに対するワクチン接種が可能な国では、Haemophilus髄膜炎はほとんどないと聞いている。日本では、ようやっと(ひっそりと)認可されたところだ。専門家以外、おそらく誰も知らないだろう。このワクチン、むちゃくちゃ接種費用が高く、価格設定が万人向けのワクチンではない。政府はとっとと、このワクチンの広報に努め、もっと広く情報を出して啓蒙するべきだと思う。その効果に関しては、海外でほとんど証明済みだと云ってもいい。日本には日本の治験が必要だという意見があることは承知しているが、タミフルを見ても分かる通り、治験でわかる副作用なんてほんのわずかである。タミフルだって、ちゃんと臨床治験を通過してきているのだ。ここらへんのことは、岩田健太郎先生の本にも書かれている通りだと思う。

(ちなみに、世界のタミフルの使用量のうち、約7割を日本が消費していると云われる。タミフルの副作用について、世界中が日本の動向に注目しているのだ。薬の副作用の大半は、マーケットサーベイランスによって発覚する)

後だしじゃんけんで必要な処置を講じなかったと断罪される医師がいるのであれば、必要な処置を講じていない政府の罪はいったい誰が裁くのか。これほど理不尽な話しはない。Haemo髄膜炎を見るたびに、そう思うのだ。日本の医療行政は、知れば知るほど、理不尽なくらい貧弱である。