まず考える

グラム染色を前にして、まず考える。最近、グラム染色を見るときには、じつは「菌を見てはいけない」のではないかと思うようになりました。

だいたいグラム染色を見る前に、患者さんの状態を把握するべきだと考えます。そして、そこからもっとも可能性の高い菌を想定する。その想定なしに、グラム染色を見てはいけないのではないか、そんな気がしています。菌だけを見て失敗するケースを何回も経験しているせいか、とりあえず患者さんの状態を把握して、そこから攻めていく方法の方が私は好みです。

グラム染色も、スライドを見ていると菌以外の情報が意外に多くて、役に立つことが多いです。もちろん一番役に立つ情報はそのものずばり「起炎菌」なんですが、白血球の様子や扁平上皮、全体のバランス、フィブリンの有無など、いろいろと読み取れる情報は多い。そうやって読み取った情報を総合して考えて、そこから菌名を判断する。医療の世界は所詮確率論の世界ですから、そうやってちょっとでも的中の可能性をあげてやりたいと思うわけです。主治医が病状から鑑別診断をいくつか想起するように、検査技師もグラム染色を見る前に起炎菌をいくつか想起出来るべきだと考えます。そしてグラム染色を見て、そこから「判断」する。まず考えることが重要なのではないでしょうか。

まあしかし、論理的な思考では超えられない、才能としか云いようがない壁があるのも事実なんだよなあ……