便中白血球の意義

入院患者の下痢症では、必ずこの便中白血球の観察を試みるべきです。便中に白血球が認められれば、きわめて重要な意義を持ちます。

そもそも入院患者の下痢症に便培養は不要で、入院後3日以上経過した患者さんの便培養にはあまり意義がありません。これは3day ruleとして、感染症関係のいろいろな本に記載されています(研究もあります)。明確に起炎菌を推定出来る特殊な状況を除いて、便培養する意義は乏しいと考えられます。それよりも、入院患者の下痢症には、グラム染色です。便中に白血球が認められれば、それはCDADの可能性を示唆します。最終的には抗生剤の処方歴なども参考にしますが、一度はCD toxinの検出を試みるべきです。

入院患者の下痢症にCDADが鑑別に上がらないというのは非常に問題だとは思いますが、見つけてあげると主治医は非常に喜んでくれます。便中白血球が明瞭に観察出来て、入院後3日以上経過していて、抗生剤の処方がある場合、CDtoxinが陰性だったことはほぼありません。後輩には常に便中白血球を見つけたら状況を考えてCDtoxinを実施するように、と教えています。

まあ、厳密には、あとはクローン病だの潰瘍性大腸炎だの、さらに鑑別する必要性はあるんですが、便培養を出してくるくらいですから、そこらへんの疾患は自然と除外してもよいのではないかと思います。

ちなみに、外来患者の便に便中白血球を見つけたら、考えることは多いです。いわゆる「大腸型」の疾患すべてに可能性がありますから。先日、外来のドクターに、「便中白血球で抗生剤を出すかどうか考えたいけど、そういう判断は可能か?」という質問を受けました。答えは、「無理」です。旅行者下痢症の起炎菌である大腸菌は、基本的には大腸型になりません。便中白血球を伴わないので、そういったものに抗生剤を処方したいのであれば、便中白血球を判断材料にすることは出来ないといってもいいでしょう。