PAPM/BPの謎

日本にしか存在しない「和製」抗生剤がいくつかあります。カルバペネムにもそういう薬剤があり、PAPM/BPはそういう「和製」抗生剤のひとつです。キノロンにもPZFXという和製抗生剤がありますね。

何でも国産がもてはやされる昨今ですが、抗生剤の世界では「和製であること」は歓迎されません。私はむしろ嫌いです。なぜかというと、詳細に検討されたデータがきわめて少ないのです。ですので、自然と正体のよくわからない薬になります。いまのところ日本では5種類のカルバペネムがありますが、ほとんど大同小異といっても差し支えないくらいの差しかありません。PAPM/BPはS.pneumoniaeによく効くかもしれない、緑膿菌がちょっとだけ得意かもしれない(どうも間違いっぽいです)、という話は聞きますが、正直なところ、緑膿菌を狙ってPAPM/BPをお勧めすることは皆無なので、どうでもいい差だと云えます。緑膿菌を本気で相手にするなら、当院ではCAZ+TOBをお勧めしています(この組み合わせがいちばん医師の抵抗が少ない)。

最低限、髄液、眼、前立腺などの移行性がわからなければ、とてもじゃないですが使う気になれないと思います。あと特殊なところだと骨髄あたりでしょうか。まあその都度調べたらいいんですが、それよりもいま日本にある自動化機械で、PAPM/BPの感受性試験が実施出来る機械ってないんじゃないかなと思います。こっちの方が痛い。和製でデータに乏しいため、一般化された情報も少ないです。他のカルバペネムの結果でPAPM/BPの結果が推測出来るかどうかもわかりません。よって、私はこの薬を無視しています(笑)。

IPM/CSとMEPMよりもPAPM/BPが絶対に必要なシーンって、そうそうないと思います。カルバペネムはIPM/CSとMEPMの二種類で十分だと思うし、キノロンはCPFXとLVFXである程度の用件は満たすと思う。不必要な薬剤を院内で採用しないことも重要なことではないでしょうか。
(大同小異のセフェムのなんと多いこと!)