薬の投与量

薬の投与量に関しては、「日本独自」といってもいい基準が(暗黙の了解として)存在します。だいたい米国で標準とされている投与量の半分弱くらいのことが多いです。とくにセフェム剤は危険な方法で投与されている代表的な薬剤で、1g×2/dayでは少なすぎることが多い気がします。

いま日本の7割強くらいの施設がMICを測定し、その9割でCLSIの判定基準を用いて判定していますが、もともとCLSIの判定基準は米国の投与量を基準に設定されているため、日本では「現状に合わない」ことが多いです。日本独自の投与量の言い訳として(あえて言い訳と云おう)「体格差」が挙げられますが、薬物動態的に見ておかしいと思われる投与設計が多々あり、もはや体格差では説明がつきません。日本の添付文書に記載されている血中濃度の記述を参考に、いろいろな方法で血中濃度をシミュレートしてみたことがあるのですが、いずれも余裕のない、ぎりぎりTAM>40%を実現出来る、くらいの投与量でした。これでは実在の人間に投与するには、ちょっと不安です。

だいたいPIPCなんて、「大量投与」することが前提になっており、その前提で判定基準が組まれています。添付文書どおりに投与するのは怖いと思える薬剤のひとつではないでしょうか。

有効と判定された薬剤が効きません、という話をたまに聞きます。有効判定された薬剤が臨床的に無効な理由は、1.投与量が足りない、2.血管内感染症の存在、3.膿瘍・壊死組織の存在、4.そもそも原因微生物はそいつじゃねえ、くらいでしょうか。こちら側からは、いずれもよくわかりません。1.の理由を消し去るためには、腎臓の許すかぎり、ぎりぎり目一杯使うのがいいんじゃないかとよく思うところです。

ところで、VCM散も125mg×4/dayと500mg×4/dayで効果に差はないそうです。投与量が多すぎる、なんて目くじらを立てるひとがいますが、日本のドクターはよく500mg×4/dayで投与しますね。VCM散は高価な薬剤ですので、使うなら125mgでいいのではないでしょうか。もっとも、偽膜性腸炎の第一選択はメトロニダゾールですが……