酵母様真菌の感受性パターン

医療の世界には、数字に置き換えないと知覚出来ないことがたくさんあります。この分野の先輩たちが一生懸命論文にまとめた膨大な量のデータは「財産」です。財産を活用出来ることに感謝しないといけませんし、その財産を食いつぶすだけではなく、自分も何かを残す事はほとんど義務と云ってもいいのではないかと思います。そう思うと、何かがんばらないといけないと思うのですが、なかなかうまくいきません。

酵母様真菌のデータをまとめていて気がついたのですが、MCFGのC.parapsilosisに対するMICは、他のnon-albicans Candidaに比べてずいぶん耐性傾向ですね。おお、これはほんとかな、と思ってまず「レジデントのための感染症マニュアル」を見てみたんですが、ちゃんと載っていました(笑)。臨床的に意義があるかどうかは解らないと書いてありましたが、そもそもC.parapsolosisにはFLCZが使えますから、MCFGは使わない方がいいんじゃないかと思います。使っても効くとは思いますが……

ついでですから、Candida属のおおまかな感受性パターンをツリーで。久しぶりだなあ。

  • Candida属の感受性パターンは、大きくC.albicansとnon-albicansに分けられる。
    1. C.albicansはもっとも病原性が強いとされるが、アゾール系がほぼ100%効く。耐性が問題になるのは、HIVなどで治療を繰り返した場合のみらしい。もちろんMCFGの効きもよい。
    2. non-albicans Candidaは、FLCZに耐性を示すものが比較的多い。
      • C.glabrataはFLCZに用量依存性耐性。C.glabrataの半分くらいは耐性だと覚悟した方がいい。
      • C.parapsilosisはFLCZに感受性。アゾールでまったく問題ないが、MCFGのMICが耐性側にシフトしているのが面白い。おおむね1(μg/ml)以下で、臨床的には問題にならないと考えられる。
      • C.kruseiはnon-albicans Candidaのなかでも最悪の耐性度を持つ。FLCZにほぼ耐性で、VRCZもMICが耐性側にシフトしている。血中濃度の安定しないITZも、使えないと考える方が無難。MCFGは効くが、MICは耐性側にシフトしている。
      • C.tropicalisはFLCZがよく効く。MCFGもOK。通常、アゾール系で問題ないはず。


ウチの施設ではCVCカテーテルに関係する感染症に多くC.parapsilosisが絡んでおり、検出率の高さは異常と云ってもいいくらいです。C.glabrataの検出率も高く、カテーテルの管理の悪さ、FLCZの乱用具合が想像されます。薬剤使用量を取ってみたいのですが、諸処の事情でうまくいっていません。

ここで重要なのは、菌名でだいたいの感受性結果が予想出来るという事。迅速に主治医に伝えてあげたい内容です。私はC.glabrataやC.kruseiが出て来たときは、薬剤をMCFGに変えるように勧めています。