好気と嫌気、どっちが先か?

少し前までは、「嫌気ボトルが先!」が常識だったように思うのですが、さいきん好気ボトルが先でもよい、というか、好気ボトルに十分量を注入すべき、という方向になりつつあるようです。個人的な意見としては、私は「好気ボトル→嫌気ボトル」派です。血液培養から嫌気性菌が検出されることはほとんどなく、むしろ検出頻度としては圧倒的に多い(&致死的でもある)緑膿菌を見逃さないためにも、好気ボトルに十分量を確保すべきだと思います。いままで血液培養から嫌気性菌が出てくるときは、ほとんど必ずといっていいほど「検出されるに足る理由」がありました。出てくるシチュエーションが明確です。そしてそんなときは、必ず嫌気性菌をターゲットに入れた抗菌薬を選択しているはずです。

ただ、十分量の血液を確保出来ているなら、別に嫌気ボトルが先でもいいんじゃないかと(個人的には)思っています。好気性菌と嫌気性菌の混合感染がある場合、嫌気性菌を叩き損ねたときには死亡率が跳ね上がるという報告を読んだことがありますので、嫌気性菌の検出を優先させることで好気性菌の検出に著しい悪影響が出ないかぎりは、出来るかぎり嫌気性菌を優遇してあげたいなとは思いますね。ドクターによっては、嫌気性菌が出たと伝えると魂消るひとがいますので……(お腹回りのベースがある場合は、嫌気性菌は必ず視野に入れましょう)

ちなみに、意外に血液疾患で全身性の嫌気性菌感染症を起こす人は珍しいですね。この場合、最大の敵は緑膿菌であり、これぞ好気ボトルを優先させるべきシチュエーションだと思います。Candidaも嫌気ボトルには生えてこないことが圧倒的に多いです。血液疾患で熱発患者を見るときは、好気ボトルばかり数セットでもいいかもしれないとは個人的な意見です。(検査費用をケチりつつ、血液培養の感度を上げるための、涙ぐましい思考実験)