下痢がおさまらない

もちろん私の話ではありません(笑)。

他院からの転院患者さんで、前医での治療歴(というか、抗菌薬投与歴)がほとんど不明という、ある意味爆弾のような患者さんです。酸素が必要なくらい状態が悪く、心不全もあります。困ったことに、経口で栄養摂取出来ません。以前、VCMを内服していた経験がある、ということだけはハッキリしていますが、それ以外がほとんど詳細不明です。

下痢が止まらない、ということなので、とりあえず便のグラム染色を見たのですが、かなり新しい新鮮な白血球がちょろちょろと見えていました。私はこれを見た瞬間に「→CDテスト」でCD toxinの検出を試みたんですが、結果は陰性。あれー、おっかしいなー、病院暮らしが長いらしいからまさかCampyloや赤痢ってことはないだろうになー、とか思いつつ培養をしてみたんですが、腸管内の常在菌に加えて、緑膿菌が4+。それ以外に、とくに病原性のある菌は見つけられませんでした。

別に抗がん剤が投与されているわけでもなく、CD toxinは陰性で、Campylobacterや赤痢がいるわけでもない。細菌性のものが否定的なら、あとは炎症性の大腸疾患しかないだろうと思って報告書を書いたんですが、一週間以上経って、また下痢が止まらないと相談がありました。正直な話、現時点で原因がよくわかりません。相変わらず便中白血球が陽性なので、何かの炎症はあると思うのですが、一週間以上も前から下痢が持続しているわけで、粘性の便性状から見ても、細菌性は否定的なのかなあ、と。CD toxinは陰性。培養にもとくに有意な菌は見当たりません。主治医が云うには、炎症性大腸疾患はとくに見当たらない、とのこと。こうなると、もしかして緑膿菌が悪さをしているんじゃ……とか考えたくなります。下痢に関与することはあるんですかね……?

こんなときの対処法?

  1. 結果は陰性だけど、経験的に、CD toxinに対する治療をしてみる。
    • とりあえず、メトロニダゾールを一週間くらい。VCMは使わない。
    • 効いたらラッキィ。実際、検査でひっかからないCDもあることを忘れない。
  2. 炎症性の大腸疾患を探す
    • 主治医がないって云ったら、検査側はお手上げ。泣かない。
  3. いわゆる「大腸型」の原因菌をさがすべく、便培養培地フルセット。
    • Campyloや赤痢サルモネラあたりを検索する。季節によっては、腸炎ビブリオも対象。
    • 涙ぐましい努力として、CDを培養してみてもいいかも。培養した菌株を前処理して、CD toxinを検出する方法もあるらしい(やったことはない)。
  4. 寄生虫の可能性も検索すべきか?
  5. もしかして、他に炎症のフォーカスがあって、その表現形のひとつとして下痢が出ているだけなんじゃ……
    • いちばん恐ろしいパターンかも知れない。こんかいはまだ、この可能性を捨てていない。
  6. マジで緑膿菌が下痢を引き起こしているかも?
    • こればかりは何とも。可能性としては捨ててはいないが、多剤耐性なんだよね、コイツ……