嫌気性菌をカバーする

みなさんもご存知の通り、嫌気性菌をカバーする薬剤は限られています。もっとも有名なのが、CLDM。ほとんどのDrは嫌気性菌用抗生剤だと認識しているようです。次にCMZ。これは逆にあまり嫌気性菌にも効くんだと意識されていない抗生剤だと思います。あとはIPM/CS。これに至ると、もはや「強い抗生剤」という認識でしかなく、ことさらに嫌気性菌が意識されていないようにも思えてしまいます。

こんなことを考えてしまうのも、よく「○○ダラ」の通称で呼ばれる「+CLDM」の使い方に疑問があるからです。とくにチエダラに関しては以前にも書きましたが、嫌気性菌全般を強力にカバーするIPM/CSにCLDMをかぶせる必要があるのかと云われれば、うーんどうだろうと疑問に思います。個人的には、毒素を産生している菌が相手でなければ、CLDMをかぶせる必要は(スペクトル的には)ないと思います。嫌気性菌はCLDMでなければならない、というのは、根拠のない思い込みです。医療費がかさむだけですので、やめた方がよいでしょう。

私としては、CMZをもうちょっと大切に使って欲しいなと思う今日この頃です。世代も低い(不適切表現)ので濫用しているという意識が薄いのか、明らかに他のNarrowな薬剤でだいたい可能な感染にも頻用されている気がします。

濫用とはまた違った使われ方もしているようです。これは思い込みのなせる技なのか……

院内発症のカテーテル感染症。尿からは白血球が大量に見え、グラム陰性桿菌が多数見受けられた。印象としては、大腸菌のように思えるが、入院期間が長く、なんとも云えない。でもおそらく、緑膿菌は否定的だと感じられる。グラム陽性菌は見られない。
全身状態はむちゃくちゃ悪く、血液培養からもグラム陰性菌が検出されている。ショックがあり、DICを併発している。血行動態はきわめて不安定。

こんなとき、第一選択にCMZを使うんですなあ、ウチのDrは……

聞くと、「CMZだったら腸内細菌ぜんぶカバー出来るでしょう?え、もっと強い抗生剤の方がいいですか?」(これ実話)
なんぞと云うわけで、寒気がしたものです。いや、第一印象の「緑膿菌が否定的」が間違っていたら患者を殺しかねないわけで、これを聞いたときにはほんとにびっくりしました。思わず翌日は早朝出勤してしまった。

明らかにカルバペネムの出番です。外したら死ぬという状況下で、CMZはありえない。もしちょっとでも耐性傾向のEnterobacterやCitrobacterだったらどうするつもりだったんだろう。いまでも思い出してガクブルします。