様子を見る、という選択肢があり得ない感染症があります。細菌性髄膜炎と壊死性筋膜炎です。このふたつは、治療が半日遅れただけで致命傷になる可能性があります。つまり、この疾患の存在を疑っておきながら患者を帰宅させるという行為は、絶対にありえないのです。
ERで治療をしなかったことが問題となり、誤診ではないかと取り上げられている事例があります。最終的には髄膜炎菌性髄膜炎だった、ということらしいのですが、髄膜炎は何とも恐ろしい感染症ですね。遭遇するたびにそう思います。
きょうはA群による軟部組織感染症を見ましたが、これも前日救急を受診した翌日に、症状が改善しないからと云って外来を受診したために発覚した、というパターンです。壊死性筋膜炎なんかは、このパターンが多いですね。最初の救急で見つけていれば……という事例が非常に多い。今回のパターンは糖尿病持ちで、踵に傷あり、その傷に発赤、腫脹、熱感とそろっていて、全身症状こそないものの、蜂窩織炎などの軟部組織感染症を疑わせるパターンでした。グラム染色を見るとレンサ球菌でしたので、一計を案じまして、咽頭のA群迅速検出用キットを使って創部浸出液を検査してみたのですが、これが見事に陽性。現状、もっとも矛盾しない可能性としてA群レンサ球菌感染症の可能性を伝えましたが、即座に入院になって、外科的にデブリドメンしたようです。大事には至っていないようで、よかったと思います。
ちなみに注意書きを書いておきますが、咽頭用はあくまで咽頭用です。状況証拠のひとつとして、迅速検査陽性を伝えましたが、これはそもそも咽頭用なので、こういう使い方をメーカは保証していません。真似しないようにお願いします。するときゃ、自己責任で。