感染対策とエビデンス

ICUの感染対策というのはどこでも悩ましい問題で、モノが生命に直結するため、どこでも議論が紛糾します。エビデンスとしてまとめられた結果があったとしても、自分の感覚で納得出来ない部分があるんですね、やっぱり。手術室の履き替え問題とか、無菌室の粘着マットとか。ほとんど意味がないと証明されているにもかかわらず、人間の感覚が変更に躊躇します。

無菌室の粘着マットなんかは有名な話で、もはや採用している病院など皆無でしょう(いたらごめんなさい)。ゴミを際限なく引っ付ける粘着マットには、ブドウ球菌、グラム陽性の桿菌など、環境に存在する雑菌が雑多に存在します。適切に交換されていれば問題ありませんが、感染制御に有効に働くことはありません。つまり、なくても問題ないわけですね。だったら取っ払ってしまった方が、粘着マットの代金の分、ハッピィです。だいたい、どんな床にも菌は存在するものです。床の細菌検査をルチンに行うことは無意味ですし、仮に問題になる菌が見つかったとしても、ほとんど問題になるとは思えません。つまり、手術室やNICUの環境検査も、ルチンに行う意味は乏しいと考えられます。お金の無駄ですので、やめた方がみんなハッピィですね。

ついさいきん、ICNからICUの靴の履き替えを取りやめにしたい、と提案がありました。単純に考えると、ほとんど問題がないように思います。この案件はICCにかけられて近日実行されるようですが、どの程度の影響があるのか、私個人はしばらく経過を観察しようと思っているところです。というのも、適切に衛生環境がコントロールされた病院とは違って、お見舞いに来た患者さんの家族たちは、靴に泥を付けているかもしれませんし。正直に云って、そんなことが問題になるとはほとんど考えていないんですが、まあ自分で納得出来ればそれでいいかな、と思っています。感染管理はほとんど知りませんので、勉強勉強。

でもこうやってひねくれた考えを展開していると、どうやら、自分は意外にエビデンスというものを信用していないらしい、と気がついて面白かったですね。さすがに無作為抽出された試験結果で絶対的に支持されたものは大丈夫だろうと思っていますが、そうでないものの採用には慎重であるべきだと思います。

(エビデンスということばの使い方が間違っているんじゃないのか、という疑問はさておき……)