食中毒

あれだけ生ものはダメだと云っているのに、食中毒事件が後を絶ちません。この時期に生もの料理を食べるのは自殺行為ですってば。

ウチの病院でも食事を作る人が倒れてしまいまして、えらい目に遭いました(おもに私が)。あるとき、食事担当部署の課長さんが検査室に飛び込んできて、職員の検便をしてほしい、というのですね。ちょっと話を聞いてみると、悪寒や発熱、腹痛、下痢があって、どうやら細菌性の食中毒らしい。店で生ものを食べたという食歴があったので、たぶん腸管出血性大腸菌だろうとあたりをつけました。課長さんもどうやらそれを心配していたらしく、しきりに検便検便と、検便を繰り返す。法律的には、腸管出血性大腸菌サルモネラ赤痢を持っているひとなどは調理に携わっちゃいけません。病院中に広まったらアウトですので、とりあえず仕事は休ませたようです。妥当な処置だと思います。

でもね、と思うわけですヨ。検便って簡単に云いますけどね、あなた、ちょっと大事なことを忘れちゃいませんか?


私 :「悪寒、発熱、下痢があるんですね……で、店で生ものを食べた、と」¢(・_・。)メモメモ
課長:「そうそう、そうなんよ。でね、家族まで下痢始めたらしくって」
私 :「あちゃー、それは大変ですね。家族にも患者あり、と」¢(・_・。)フムフム
課長:「かかりつけの医院では診てもらったらしいんだけど、検査したのかどうかわからなくってね」
私 :「じゃ、薬をもらったのかどうかもわからないんですね?」
課長:「そうなのよ。そこじゃ、勤務に就いては勤務先の病院の指示に従えって云われただけだって」
私 :「はあ……(無責任なかかりつけ医だなぁ)」
課長:「だからね、ちょっと無理云うけど、検便を急いでやってほしいの」
私 :「まあ、検便するのはいいんですけど……熱が出て、下痢もしていて、店で生もの食べたんですよね?」
私 :「その職員、すでに立派な食中毒患者ですよ?
    かかりつけ医でも検査もしてるかどうかわからないみたいですし、
    検便よりも、ウチの病院を受診するのが先だと思いますけど」
課長:「……あ」


どうやら検便に頭がいっちゃって、そこまで思いつかなかったようです。おそらく最初のかかりつけ医では具体的な検査もしていないと判断しました。こっちに回ってきた情報が曖昧すぎるのでほんとのところはわかりませんが……行政の絡む食中毒事件となると、ちゃんと診断することが重要になります。正式に救急を受診してもらい、便培養をしたところ、Campylobacterが検出されました。いやあ、便中に白血球も見えたし、食歴(生レバー)から腸管出血性大腸菌だと思いこんでいたので、見事にスカでしたなあ。はっはっは、グラム染色でもCampylobacterなんか見えなかったしー。

。・゚・(ノД`)・゚・。ナサケナヤ……

患者の病状はよくなりつつあるようで、よかったと思います。まあ、ちゃんと病院を受診するのが基本ですね。事件の調査というよりは、それが本人のためです。