プロカルシトニンについて その2

いくつか調べて理解したことを列挙してみます。間違ったことも書いていると思うので、華麗にスルーして頂くのはいつもどおりです。

  1. プロカルシトニンは全身性の感染症、すなわちsepsisで上昇する。
    • septic shockを持つ群では、spesis群に比べても有意に上昇するという報告がある。
    • 蜂窩織炎などの局所感染症では、ほとんど上昇しない。
    • 髄膜炎患者では有意な上昇が見られる。
    • 細菌感染、寄生虫感染症(?)では有意に上昇するが、真菌に対する評価は「上昇する」派と「上昇しない」派があり、固まっていない。
    • 手術時にはほとんど上昇しないが、術式によっては上昇することもある。
      • 小手術、人工物置換術などでは、ほとんど上昇しない。
      • 腸切除、食道切除などでは上昇するらしい。
    • 血中半減期は22時間〜35時間ほどらしい。
      • これは腎不全患者でも変わらない。ということは、たぶん透析患者であっても変わらないだろうと思われる。
    • プロカルシトニンは通常、甲状腺で作られるが、甲状腺全摘患者であってもsepsis時には有意な上昇が見られる。
      • sepsis時の産生場所はよくわかっていない。
      • 一説には単球やマクロファージ、肝臓なのではないかと云われているようだ。またエンドトキシンが肝臓でのプロカルシトニン産生を促すという記事を見た。これが事実なら、重症肝疾患を抱えている患者の評価については、熟考する必要がある。
    • 治療の開始から数日のうちにプロカルシトニンが低下する症例は予後が良い。これは早期に感染が抗菌薬によってコントロールされていることを示唆している。
      • ただし、プロカルシトニンが低下したからといって抗菌薬を中止する理由にはなりえない。このプロカルシトニンの低下はあくまでも「感染がコントロールされた状態」を示唆しているだけに過ぎないためである。抗生物質の中止をそこから判断するのは難しいかもしれない。


ICUで重症感染症を早期発見するのに使えそうかな、とは思いますが、血液培養に取って代わるほど重要な検査かと云われれば、どうでしょうか。血液培養と併算できるであればプロカルシトニンと血液培養を同時に採取して加療する、なんて使い方は出来ると思います。いまふと思いましたが、コンタミかどうかを判断するのには使えそうですね。

プロカルシトニンが陽性であれば重症感染症として加療対象にするのはいいと思います。ただ、そのときは起炎菌は不明ですから、エンピリックな治療にならざるを得ません。血液培養は不可欠です。ただプロカルシトニンが陰性だったとき、エンピリックな治療を打ち切る根拠にはなるかもしれません。血液培養が陰性でプロカルシトニンが陽性だったとき、Occult bacteremiaと判断して治療を続行する根拠にもなるでしょう。そういう使い方であれば、十分有用性がありそうです。診断に根拠を与えてくれるツールになり得ると思います。

あと、画像検査などから感染性かどうかが判断しにくい感染症、とくに膵臓関係では有用でしょう。感染性膵壊死はかなり危険な感染症ですが、臨床像から判断するのは難しい感染症のひとつです。こういう感染症を狙って実施されるプロカルシトニンは、とても有用性の高い検査だと思います。

ただこれひとつで重症感染症を発見する魔法の検査みたいに思われると、とたんに価値が下がりますね。検査前診断がしっかりしていないと、とんだお荷物検査になりそうな気もします。(DPC施行施設とかは厳しいかもしれませんね)