キノロックス

ほとんど雑記ネタです。キノロックス、「QED 河童伝説」に出てきた架空の抗生物質ですね。第三世代のセフェム系薬のようです。

劇中でも軽くふれられていますが、どうしても抗生剤は濫用される傾向にあります。救急外来で肺炎のお年寄りを見つけたら即座にチエナムを突っ込みたくなる気持ちはわかるのですが、そこをぐっとこらえてABPC/SBT 1.5(g)×4/dayとか、渋い選択をしてくれるDrはいないのかなあと思うわけです。いや、チエナムは絶対に使ったらダメ!というわけではないんですよ。そのチエナムにしても、0.5(g)×2/dayとかダメな見本のような使い方をせずに、ちゃんと×4、せめて×3で使ってください、と思うわけです。チエナムの半減期は1時間です。腹持ちの悪いお昼を食べたら、3時にお菓子を食べたくなるでしょう?それと同じだと思うんですが。

閑話休題。

QEDを読んでいて思ったんですが、いまの抗生物質の濫用は、新薬の登場では解決することが出来ません。これはもう間違いなく。これだけ優秀な抗生物質が溢れ返っているんですよ?治療に必要な薬はもう十分にあるんです。あえていうなら、点滴のキノロンがない、点滴のメトロニダゾールがない、そういう問題はあるんですが、セフェムに関してはまったく問題がない。ありすぎて困るくらいです。そういう状況下にセフェム系の、しかももっとも濫用されている第三世代のセフェムを上梓することに、いったい何の意味があるのか。術後の抗生物質投与、すなわち予防投与の域にとどまるかぎりは第三世代セフェムの出番はほとんどありませんので、作中で語られるように、術後に投与されることはほとんどありません。第三世代はほとんどの場合、治療薬として投与されます(例外はいつでもありますが)。新しいセフェムが発売されれば、こんどはその薬が濫用されるだけです。

濫用される=不必要な投与が少なからずある、ということです。他の抗生物質で代用出来るのに、セフェムを使ってしまう。とくに第三世代は広域でいろんな菌に効果があるので、これを使っていたら大丈夫、という安心感が出来やすい薬でもあります。すなわち、現在の抗生物質の濫用は、必要な薬がないから起きているわけではなく、ただ単に従来の薬の使い方を知らないから何でもかんでもセフェムを使いまくっているだけだ、というだけのことです。つまるところ、このキノロックスに関しては、作中に語られるような濫用を抑制する効果はまったく望めないだろう、と思います。

まあ、あんまり革新的な薬を登場させるわけにはいかなかったんだろうなー、とは思いますけど……そうですね、キノロンとかでもよかったのでは?尿路にも使える、クラビットに代わる新々キノロン!売れると思うけど……*1

*1:いまたぶんもっとも新しいキノロンであるモキシフロキサシンは尿路には使えません。注意