血液培養から出たレンサ球菌を叩く

血液培養からレンサ球菌が出てくることがあります。レンサ球菌と云えば、StreptcoccusやEnterococcusですね。塗抹のグラム染色像でどちらか判断しづらいこともありますが(その場合はたいていレンサ球菌だったりしますけど)、血液培養が陽性になった時点で使う薬が大きく絞れます。処方をチェックして、大きく外れた抗菌薬が投与されている場合は、Drに変更を示唆したりもします。で、いつも考えるんですが、血液培養からレンサ球菌が見えたとき使う薬はといえば、これはもうABPC一択でいいんじゃないかと思うんですね。血培陽性と聞くと何かセフェムを投与したくなるのはわかるのですが、グラム染色形態を聞いて、ぐっとこらえてください。連鎖球菌だった、という報告を聞いてなおセフェムを開始するのは、やめた方がよいのではないかと思います。

  1. レンサ球菌と云えば、StreptcoccusかEnterococcus。
    • Streptococciだった場合、ABPCはどうか?
      1. 仮にA群、B群だったとしても、PCG、ABPCに耐性の株は存在しないためOK
      2. Viridans Streptococciだったとしても、高用量で用いればおおむねOKのはず
      3. 正体がS.pneumoniaeだった場合、PSSPとPISPまでならABPC高用量で何とか対処出来る
        1. PRSPだった場合がダメかもしれない。こんなときに注射薬のLVFXがあったらと思うが、ないものは仕方がない。
          • PZFXは和製フルオロキノロン。そのためスタディが比較的少ない(めちゃくちゃ少ない?)。おそらく、S.pneumoniaeには効果がない。とても勧めてみる気にはなれない。
          • CTRXかなあ、やっぱり。
          • PCGで何とか頑張ってみるのはダメかな。
    • Enterococciだった場合、ABPCはどうか?
      1. E.faecalisならまったく問題ない。むしろPCGよりも勧められる。
      2. Enterococciにセフェムは効かない。レンサ球菌と効いたときにセフェムを投与するよりABPCを使う方がいいんじゃないかと思う理由のひとつ。
      3. E.faeciumだったときが悩ましい。PCGもABPCも効かないことが多い。
        • そのときは、もはやVCM一択だろうか。


特殊な理由がないかぎりは、私は薬の選択について相談された場合、セフェムを使っていた場合はABPCに変更することを勧めています。あまり血液培養からレンサ球菌が出てくることもないんですが……

それと、忘れてはならないのが、感染性心内膜炎です。血液培養からレンサ球菌が出た場合、もう血眼になって感染源を探してください。レンサ球菌感染症やブドウ球菌感染症に感染性心内膜炎が続発することはそう多くはありませんが、ハイリスクグループには注意が必要です。また拾ったレンサが感染性心内膜炎のものだったりすると目も当てられないので、そこらへんもきっちりしておく必要があるかと思います。治療期間がぜんぜん変わってきますので。