沼島に行ってきたよ

淡路島の南端部分浮いている、人口600人ちょっとくらいの小さな島です。「古事記」や「日本書紀」によりますと、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)、伊弉冊尊(いざなみのみこと)の二神が天上の「天の浮橋」に立って、「天の沼矛(ぬぼこ)」をもって青海原をかきまわし、その矛を引き上げたところ、矛の先から滴り落ちる潮が凝り固まって一つの島となった。これが「おのころ島」で、その所在は諸説紛々ながら、この沼島ではないかという説があります。淡路島全体がそうなのではないかという説もありますが、いちど沼島には行ってみたいと思っていたのです。ここには、日本最古とされる「おのころ神社」があります。

で、行ってきますた。
 真ん中に見えるのが沼島

淡路島の南端、土生港から出る汽船を使って移動します。1日10便しか出ていないのがツライのですが、ここを使うしか移動手段はありません。非常によい天気で、またとない観光日和です。

ところで、日本最古の神社、なんて聞くと、さぞかし壮大な社殿と風格があるんだろうなあ、と思いませんか?なんとなく伊勢神宮とか、伊弉諾尊神宮とか、そういうのを想像しませんか。じつは私はそう思っていました。事前に調べてはいたんですが、サイトには長い階段が載せられており、これはこれでなかなかよさそうな感じです。「日本最古」にちょっと期待していたのは事実ですし、沼島に到着したときはどきどきでした

そのどきどきは、すぐに別のどきどきに変わるのですが。

    _,._
  (;゚ Д゚)…?!

  (つд⊂)ゴシゴシゴシゴシ 

道、どこ?

たて看板によれば、全国に信者がいるはずの「おのころ神社」ですが、入り口をあやうく見逃すところでした。そして、道がない。道がないというか、いや、道はあるのだが、

 けものが通るぜ

参拝するのは本当に人間ですか?

 通るのはケモノだけではないらしい

で、はやくも挫けそうになりながら道なき道を歩くこと数分。ようやくそれらしきものを発見。

 「自ずから凝る」ということか?

 紹介サイトの写真よりも綺麗

長階段は非常に綺麗でした。それもそのはず、ごく最近に作り直したようです。新緑も豊かで、非常に清々しい。「おのころ神社」そのものはというと……何というか、とても古い神社でした。私は神社を正面から撮るのに抵抗があるので神社そのものの写真はありませんが、とにかく古い。最古かどうかは知りませんが、間違いなく古い神社です。ええ、あんまりにも古過ぎて、休憩所かと思いましたがな。写真に見えている休憩所の屋根らしきものがそうです。その奥にも建物がありましたが、やっぱり古くてびっくりしました。だって、直前の階段がそこそこ綺麗だったし。

 いざなぎといざなみ

なんか部分的に新しいんだよなあ……アンバランスだ。

気を取り直して、歩く歩く。どんどん歩く。汽船の関係で、2時間しか島にいられない。リミット付きなのだ。2時間で目的を達成して、島を脱出しなければならない。脱出出来なければ、この何も店がない島にさらに2時間取り残されるのだ。恐ろしい。考えるだに恐ろしい。

歩きたいんだけど

道がない

泣いていいかなぁ

マジ道、どこさ!?

いままで日本全国津々浦々、趣味で神社巡りしてきましたが、神社巡りしながら遭難するかも知れないと思ったのは初めてです。マジでビビりました。いちばん怖かったのは、もしかしたら蛇がいるかもしれないということ。ハチは大抵警告してきますが、蛇はそのまま噛み付いてきます。そこらへんの毒のない蛇ならいいんですが、もしかしたら毒蛇がいるかもしれません。この懸念は実は半分当たりで、本気で泣きそうになったんですが、まあそれはあとで。

とりあえず無事におのころ神社参拝を終えて、まともな舗装道路に出れたんですが、こんどは上立神岩を見に行きました。おのころ神社と上立神岩、このふたつがきょうの主な目的です。

解説
実物

なかなか壮観です。竜宮の表門とも呼ばれるこの上立神岩ですが、このような説明を読むと泉津平坂(よもつひらさか)を塞いだ大石、道反の大神(ちがえしのおおかみ)*1を連想してしまいますね。道反の大神は道祖神ですが、異界と現実を隔てる案内役だというイメージが私にはあります。

この辺りは、アミダバエと呼ばれているようです。由来は室町時代に阿弥陀様が海から出現したからだそうですが、阿弥陀様といえば、西方極楽浄土にいると云われるありがたい仏様です。補陀洛渡海にも見られるように、海の向こう側には別世界が存在するのです。まあ補陀洛渡海は南の果ての補陀洛浄土にたどり着くことを目標としていたわけですが、そんなわけで海の中から阿弥陀様が出てきてもあまり不思議に思いません。

最近は特に心もとない人々のために阿弥陀様がお怒りのためか、忘れかけた頃に人身事故が後を絶ちません。

恐ッ!阿弥陀恐ッ!(人身事故は阿弥陀様の怒りが原因じゃないだろうに)

とまあ、こんな感じでいろいろ写真も撮ってみたんですが、おのころ神社以外が意外に面白く、なかなかよい経験でした。いま紹介したところ意外にはほとんど見るものもない沼島ですが、興味のあるひとは一回行ってみてはいかがでしょうか。まず間違いなく、1日仕事になりますが……

ちなみに下山するときにでっけえ蛇に遭遇し、死に物狂いで逃げてきたというエピソードがあったりします。あれ絶対毒持ってるって。あまりに必死だったんで、写真撮る余裕なかったよ……

*1:ペルソナ3に出てくる地返しの玉はもともとも道反しの玉と書きます。でないと意味が通りません