たまたま見つけたOKwaveの質問

本来は質問者に直接お答えすべき内容ですが、もう時間が経っていることですし、登録するのがイヤなので、ここで書いてしまいます。検査内容から状態を推測する思考実験です。あくまで門外漢の推測ですので、真に受けないでください。

心筋梗塞後にCRPが高くて困っている(4〜7)、といった内容でしたが、尿検査、痰検査、胸部レントゲンが陰性、CRP高値の理由がわからずに困っている、といった内容でした。URLを貼付けておきます。発熱があるようなので尿検査、喀痰検査、胸部レントゲンをやったのだと思います。どれくらい継続しているのかがわかりませんが、いわゆる不明熱(FUO)ですね。これだけの理由でチエナムを使っている、というのにまずぶっとびました。

まずCRPは感染症の予後に関与しないと思います。CRPが30であろうが40であろうが、適切な治療をすれば予後には関与しないのではないかと思うわけです*1。従ってCRPが高い、発熱しているというだけでチエナムを使ったという点にまずびっくりしました。回答にも書かれていますが、チエナムは感染症治療におけるナパーム弾であり、原因のわからない(しかもクリティカルでない)感染症にむやみに広域の抗菌剤を投与すると、よけいにフォーカスがわからなくなります。この場合はどの程度生命に危険があったのかわからないので何とも云えませんが、血液培養は採っていないのでしょうか。FUOのフォローには血液培養2セットが必須です。

よってCRPを下げるためにむやみにチエナムを継続するのは下痢の元です。そして案の定、患者さんは下痢をしているようですね。おそらくCDADでしょう。ひどいCDADはCRPを上昇させうる要因になり得ますので、余計に疾患が修飾されます。さらに薬剤性の肺炎や腸炎がからんでくると、余計にわからなくなります。こうなると、確定診断を下すのは非常に困難でしょう。そういう意味で、私はチエナムなどのカルバペネムがあまり好きではありません。まあ私は治療者じゃないので、好きも嫌いもないんですが。

というわけで、患者さんの状態が許すのであれば、薬剤をいちど中止して、感染症以外の原因を検索してみる必要があるのではないか、というのが私の考えです。もし同様の症例で医師に相談された場合は、このように答えるでしょう。っていうか、以前Drに尋ねられたときにそう答えました。納得はしてくれませんでしたが……

ちなみに不明熱に対する最強の抗生剤セットに、「ち・じ・み」療法があるそうです。その正体は「チエナム・ジフルカン・ミノマイシン」のセット。原因検索を完全に諦めた場合の最終手段でしょうか。実際にやっているところを見たことがありますが、改善したためしはありません。おそらく感染症が原因ではないのに感染症が原因だと思い込んでいるため、どんどんスペクトルを広げた結果がそれなのでしょう。つまり、ここまで段階的にたどり着いてしまった場合は、患者の状態と相談して抗生剤を切るべきなのではないでしょうか、というのが私の感想です。

あまり質問に答えてないな(苦笑)

*1:壊死性筋膜炎を起こしたら30くらいあっさりいってしまうが、それはあくまで壊死性筋膜炎がクリティカルなわけで、CRP30がクリティカルなわけではない。逆にもし明確に壊死性筋膜炎が疑われる状況下で、CRPが低いからといって壊死性筋膜縁を検索しない医師がいたらその医師はヤブであります