麻疹の流行

どうやら麻疹が流行しているようです。

一般的には「はしか」と云った方が通りがいいかもしれませんね。きわめて伝染力が高く、日本に住んでいたら、一生に一度はかかると云われています。ウィルスによる空気感染ですので、爆発的に広まる可能性を秘めた疾患です。ちなみに風疹は「三日はしか」ですね。

潜伏期は8〜12日間と云われているので、長い方でしょう。この長い潜伏期を経て、カタル期と呼ばれる粘膜症状を伴う期間が数日続きます。この期間がいちばん感染力が強いようです。発熱もあり、39度台の高熱です。この時点では発疹は出ていません。発疹が出るのはこれからです。

まあさすがに発疹が出れば医者に行くでしょうからこれ以上は書きませんが、ゴールデンウィークに重なったので、もしかしたら全国で二週間後くらいに一斉に火の手が上がるかもしれませんね。っていうか、そんな気がします。たいていは小さいときにワクチンを受けているはずなので、もっと厄介です。書き違いではありませんよ。ちょっとばかし、厄介なのです。

ワクチンは、接種により免疫を得た後、徐々にその効力が落ちていくものだ。これまでは、自然な周囲での流行によってウイルスに何度か接する機会があり、その度に免疫が強化されてきた。しかし、流行が少なくなった結果、現在、予防接種の効果は、接種後10年程度しか期待できなくなっているという。
日経BPより

ワクチン接種を受けてしばらく経つと、時間に応じて抗体価は低下していきます。で、そこに麻疹ウィルスの曝露を受けると、よわーいながらも、発症しちゃうことがあるんですよね。ワクチン受けているから絶対大丈夫、なんてことにはなりません(重症化を予防するためにはワクチンはきわめて有効ですが)。前述の通り、カタル期は粘膜症状がメインに出ますが、咳や鼻汁も出ますので、ワクチンを受けて弱く発症した麻疹は、もしかしたら風邪に見えてしまうかもしれない。患者の年齢が小児科領域ならまだマシなんですが、こんかいは15歳以上にも発症が見られるようで、はたして内科領域で、一見風邪に見えるこの修飾麻疹を確実に疑うことが出来るのか、という問題です。いやそれよりももっともっと以前の問題で、こういう伝染力の強い伝染性疾患の患者は別室で診察まで待機が常識なんですが、ちゃんとトリアージできるの?という問題がいちばん大きいです。上気道炎症状の患者をぜんぶ動かすわけにはいかないでしょう。

全国の医師の皆様、とりあえずそれっぽい患者は麻疹を疑ってかかった方がよいかもしれませんよ。