MRSA腸炎の是非について

先日、当ブログの検索結果のことについてちょろっと書いたのだが、どうやら偽膜性腸炎とMRSA腸炎について書いた記事にも飛んでくる人が多いようだ。それだけみんな関心があることなのだろう。私はとくにこの件について自分の意見を持たないが、治療する人間にとってはそうも云っていられない。相談を受けた検査技師もそうだろう。切実な問題なのだ。

入院患者で便培養からMRSAが検出されることは多い。菌交代で検出されることも多いし、H2ブロッカ内服例、胃全摘の症例などのハイリスクグループでは上気道のMRSAが降りてきて便から検出される。このMRSAが、はたして悪さをしているものか。これは判断が難しい。水様性の下痢を慢性に繰り返す症例で、CD toxin Aがマイナス、便からMRSAが検出されたりしたら、MRSA腸炎だと云いたくなる。これに対して、私はとくに意見を持たない。つまり、MRSA腸炎が存在するとも、存在しないとも云えない、ということだ。私が治療者なら、このような症例でメトロニダゾールを使う気にはなれないだろうし、だからといってCD toxin Bの存在を無視することも出来ない。内視鏡的に偽膜の形成が認められればそれで決まりだとは思うが、偽膜形成も見られなかった場合、もはやMRSA腸炎として治療せざるを得ないではないか。というわけで、検査技師としては、このMRSA腸炎自体は「グレーゾーン」だと思っています。CD toxin Bを検出出来るキットの、早急な実用化が望まれます。

治療には、ほんとはVCMを使ってほしくはありません。ですが、MRSAがわんさか出ている症例では、仕方がないとは思います。ですが、toxinが検出されているなら、VCMを使ってほしくはないのです。とくに外来で治療するなどもってのほかです。偽膜性腸炎の第一選択薬は、誰がなんと云おうとフラジール(メトロニダゾール)なのです。ちなみに蛇足ですが、フラジールの薬価はすさまじく安いため、適応外の使い方をしても、金銭的にはぜんぜん問題ありません。VCMの百分の一です。気になる人は調べてみてください。院内の誰かを説得するのにも、いい口実になるでしょう。